「人手不足で仕方なく」 入管法違反疑い、クリーニング会社役員逮捕

農業分野で「特定技能」の在留資格を持つ外国人を資格外の別業種で働かせたとして、警視庁国際犯罪対策課は11日、人材派遣会社「スクラムヒューマンパワー」(山梨県笛吹市)代表取締役、日原達仁(ひはらたつひと)容疑者(54)=笛吹市=ら4人を入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕したと発表した。 人手の確保が難しい産業での労働力の確保に向けて設けた「特定技能」の在留資格を持つ外国人が、なぜクリーニング工場に派遣されたのか。クリーニングなどを手がける「リネンサプライ」が、宿泊需要の回復により、深刻な人手不足に直面していることが背景にあるとみられる。 違法に外国人を働かせたとして摘発された「小林リネンサービス」(山梨県笛吹市)は、同県で最大規模の温泉地「石和(いさわ)温泉郷」で、旅館やホテルのシーツや浴衣などのクリーニングと納入の多くを担っているとされる。 だが現場では外国人頼みの状況だったとみられる。入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕された同社役員の小林幹生(かんせい)容疑者(47)は「働けないと分かっていたが、人手不足を補うために仕方がなかった」と供述したという。 警視庁が6月に摘発した時、同社のクリーニング工場で働く外国人は100人以上いた。そのうち入管法違反の疑いで3人を逮捕し、29人は不法就労だとして入管当局に通報した。捜査幹部は「ほとんどの従業員が外国人で、外国人材のおかげで成り立っているような状態だった」と話す。 笛吹市内のあるクリーニング店の男性経営者は「シーツや浴衣などの『白物』のクリーニングは過酷な職場」と明かす。しわを伸ばすプレス機の熱で夏場の工場内の室温は40度以上。「厳しい肉体労働で、日本人の求人を出しても人が集まらない」と嘆く。 インバウンド(訪日外国人客)が増加する一方、宿泊業を支える業種は人手不足に陥っている。政府はリネンサプライと「物流倉庫」「資源循環」の3分野を特定技能に追加することを検討しており、2025年中の閣議決定を目指す。 山梨県内の外国人支援機関の担当者は「特定技能の対象になれば、日本に戻ってきたいと言って帰国した技能実習生がまた来てくれるはず」と期待する。【朝比奈由佳】

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