可愛がっている猫を「人質」に、無理やり女性を連れ去った男が逮捕された。 「警視庁竹の塚署は9月5日、金銭を脅し取るために交際相手の40代女性Aさんを無理やり連れ去ったとして、職業不詳の杉本俊広容疑者(49)を営利目的略取の疑いで逮捕しました。杉本容疑者とAさんはデート代をめぐってトラブルになっていたとみられています。 杉本容疑者は4日、茨城県にあるAさんの自宅に押しかけると、Aさんが飼っていた猫やキャットタワーを自身の車に積み込みました。そうしてAさんが車に乗らざるを得ない状況を作ると、そのまま杉本容疑者の自宅がある東京都足立区まで連れ出しました。4日の午後8時から5日の午後2時まで、実に18時間にもわたって連れ回したのです。 Aさんの《助けて》などというメッセージを受信した親戚が竹の塚署に相談。署員が杉本容疑者の自宅前で張り込み、2人が帰宅したところを現行犯逮捕しました」(全国紙社会部記者) 9月7日の朝7時半ごろ、杉本容疑者は送検された。竹の塚署1階から姿を現した杉本容疑者は報道陣のカメラを目にした途端にうつむき、警察官の背後に隠れるようにしながら護送車に乗り込んだのだった。 杉本容疑者の自宅は足立区の閑静な住宅街のなか、車1台がやっと入れるほどの袋小路の奥にあった。近所に住む50代の女性は5日の朝、異様な光景を目にしたという。 「5日の朝9時ごろ、ふと外を見ると雨の中、杉本さんの家の前に傘をさした刑事さんが30人ほど立っていたんです。パトカーも1台停まっていて、ひと目でただごとじゃないのがわかりました。袋小路のなかに入ってきたのは1台ですが、外には何台ものパトカーが止まっているのが見えました。 そして午後2時ごろ、杉本さんが車で帰ってくると、刑事さんと一緒に自宅に入って行ったんです。しばらくすると、刑事さんに囲まれて出てきた杉本さんがパトカーに乗せられたのですが、そのときに誰かの苗字を大声で叫んでいました」 ◆「すぐに別の女を連れてきますから」 杉本容疑者はこの家に住み始めて1年ぐらいだという。近所に住む男性は、「決して愛想のいい男じゃなかったよ」と杉本容疑者の印象を話してくれた。 「外で会っても、めったに挨拶なんかしない、ちょっと怖い雰囲気の男でした。一日中、家にいるので、何の仕事をしていたのかさっぱり見当がつきません。この家には女性と2人で住んでいて、よく一緒に犬の散歩をしていましたよ。ちょっと前にも、夜にパトカーや救急車が来たことがあったので、ケンカでもしたのかなと思っていました」 また別の男性は、杉本容疑者と次のような会話をしたという。 「杉本さんは女性と2人で住んでいましたが、結婚はしていなかったようです。最近、女性の姿が見えなくなっていたんですが、たまたま杉本さんと話したことがあって、そのときに『あいつ(一緒に住んでいた女性)は追い出したんですよ。でも、すぐに別の女を連れてきますから』と言っていました。けっこう女性にモテるんだなと思ったんです」 杉本容疑者が話していた「別の女」がAさんのことかどうかは、いまのところわかっていない。警察での取り調べで杉本容疑者は「金銭関係で口論はあったが、無理やり連れ去るなどはしていない」と容疑を否認しているという。 ただ少なくとも、Aさんの猫を無理やり連れ去ったのは間違いないのではないだろうか。杉本容疑者の身勝手な犯行に巻き込まれた猫こそが一番の被害者かもしれない。 取材・文:中平良