2018年に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん=当時(77)=に覚醒剤を飲ませて殺害したとして、殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた元妻須藤早貴被告(28)に12日、和歌山地裁で無罪判決が言い渡された。検察側の求刑は無期懲役だった。識者は、11月に証人として出廷した覚醒剤の密売人が「売ったのは氷砂糖」とした証言が無罪判決のポイントになったと指摘した。 元妻の無罪判決を受け、約13億円とされる野崎さんの遺産の行方に注目が集まる。 野崎さんの遺言書は、生前に経営していた会社の関係者が預かっていた。簡易的な用紙に赤のサインペンで「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」と記されていた。遺産を市が受領した場合でも民法上、元妻は遺留分として、その半分の約6億5000万円を相続することができる。 2020年に野崎さんの兄ら4人が、遺言書の無効確認を求め和歌山地裁に提訴したが、今年6月に有効と判断。きょうだい側は7月に大阪高裁に控訴した。遺言書が無効と判断された場合には、遺産はきょうだい側に4分の1、被告は4分の3の約9億7500万円を受け取ることができる。一方、野崎さんに対する殺人罪で有罪が確定した場合には、相続権を失う。 この遺産とは別に、元妻は野崎さんの死後、役員報酬や野崎さんの財産から約7000万円を手にし、逮捕されるまでに約5500万円を使ったとされる。