俳優の織田裕二(58)は約40年にわたり数々の主演作を世の中に送り出し、第一線を走り続けてきた。27日放送のテレビ朝日系ドラマプレミアム「ダブルエッジ~甦(よみがえ)った男」(後9時)にも主演。長年の活躍の根底には、作品に対する真摯(しんし)な姿勢と、決して揺るがないこだわりが流れていた。(中西 珠友) 織田が登場した瞬間、室内の温度が上がったような錯覚に陥った。全身から放つエネルギー、存在感は、画面やスクリーンの奥でさまざまな役を演じたり、世界陸上のキャスターとして選手たちに一喜一憂したりする姿と全く変わらず。夏に撮影された今作を「断言していいと思うけど、この作品が最後の夏の作品。(体力的に)もう夏のロケは無理だな」と振り返ったが、その暑さには自らの“熱”も加わっていたのではないだろうか。 社会現象にもなった「東京ラブストーリー」(フジ系、1991年)、14年ぶりの劇場版が今秋に公開される「踊る大捜査線」シリーズ(同、97年~)など、ドラマ史に残る数々の作品に主演。さまざまな役を演じてきた。「これからも多分やらないだろうなと思うのは、ヤクザとホラーくらい」という中で、今回の「ダブルエッジ」では、過去の事件が原因で車いす生活となった刑事役を務めた。 「常に刑事もの(のドラマや映画)はありますが、(車いすの刑事というのは)見たことなかった。新しいものができるんじゃないかっていう期待で(オファーを)受けました」。意外性のある役どころには、織田が考える「俳優の醍醐味(だいごみ)」が詰まっていた。「情報番組とかで見ても忘れちゃうけど、知らないことを役柄を通じて見たり聞いたりしていく中で知識になり、今の僕がいるので。(役で)疑似体験できるって面白い仕事ですよね」 今作の撮影の際もあったそうだが、織田といえば撮影中に監督やスタッフに意見をぶつけながら作品を作り上げていくことで知られる。「作品は監督のもの」という考え方もある中で主張をするのは「多分、主人公だからです」と即答した。「プロデューサー、監督、脚本家、それと主役。この4人は作品に責任持たなきゃいけない。作品がダメだったら、この4人のせい。良かったらみんなのものになったりするんですが、『あなたが演じた役は良かったよ』と言われりゃ、2度おいしいというか」 脇役を選ぶことが少ないのも、その責任感と、こだわりの強さから来ている。「僕はある意味で頑固で、ある意味で思い込みが強い。思い込みが強ければ強いほどエネルギーを出すタイプなんですが、そのエネルギーをうまく使わないと厄介。主役じゃないところのポジションでこれを言っていると、作品どころかチームをぶっ壊しかねないですから」。そのエネルギーが作品にうまく行き渡った時に“傑作”が誕生するというのが持論だ。 「『これ面白いよね』とか『もっと膨らませていいんじゃないか』とかアイデアが出てきて、皆で『面白いね』って話して(作品が)化けていく瞬間がある。スタッフも最初お手伝いで、仕事でという感じで来ていたのが、いつの間にか『自前で〇〇を用意しました』と変わっていった姿を見ました」。代表例として挙げたのが「振り返れば奴がいる」(フジ系、93年)、「踊る―」、そして「お金がない!」(同、94年)だった。 今作のプロデューサーとタッグを組んで2023年に出演したテレ朝系「シッコウ!!~犬と私と執行官~」でも同様の体験をしたという。「現場が一瞬止まった時もあったけど、これが面白い。あまり時間がかかると嫌だけど、もの(作品)を作る時は同じ台本なのに違うことを考えて、ズレが生じる。ズレをどこで擦り合わせて、どう化学反応を起こさせていこうか(考えているのが)楽しかった」と振り返った。 来年には還暦、そして芸能生活40周年を迎える。「もう60のじいさんだからね。もうちょっとしたら、普通だったら店じまいみたいなことを考える年じゃないですか」と笑い飛ばすが、もちろん「店じまい」の気持ちはさらさらない。「デビュー当初は敵意をむき出しにしていた。そうじゃないとのみ込まれちゃう、ノーガードでいたらどこへ連れて行かれるか分からないと、バリアを張っていた。でも今は、その必要があまりなくなってきたから」と、経験と実績が環境を変化させてきた。 それでも一貫して変わらないのは、作品を届ける時の思いだ。「若い時から言っているけど『織田裕二、出るんだって。じゃ、見てやろうか』という人を増やしたい。まず見てもらう作業が絶対的に必要で、面白かったのに(見られなかった)という作品になりたくない」と力説。その根底にあるのは「単純ですよ。褒められたいという気持ちだけ。そして、褒められるには頑張るしかない」と頬を緩ませた。 「今後は体力がもつかという切実な問題があるから、9時~5時じゃないけど制限をつけて、その中で全力でやっていくことかな。そうなると(作品の制作に)お金も時間もかかるけど、『それでもいいよ』って言ってくれれば」。冗談交じりに今後のプランを語った織田だが、全力で作品に臨む“熱”は、これからも変わることはないだろう。 〇…「ダブルエッジ」は、けがのために捜査一課から異動した織田演じる刑事・郡司が、類似事件の発生をきっかけに捜査の第一線に復帰するところからスタートする。ほとんどの出演シーンは車いすに乗っており、これまで数多くの刑事ドラマを経験した織田でも「歩けない、走れない。えっ、どうやって犯人を取り押さえるの? それ(逮捕)をしなくていいのかな」と戸惑いもあった。撮影中には車いすを押されることへの怖さ、平坦に見える道路にも斜面があることへの気付きなど、新たな発見があったという。 ◆織田 裕二(おだ・ゆうじ)1967年12月13日、神奈川・川崎市生まれ。58歳。87年、映画「湘南爆走族」で俳優デビュー。同作の挿入歌で歌手としてもデビューする。91年のフジテレビ系「東京ラブストーリー」でブレイク。2000年、映画「ホワイトアウト」で報知映画賞主演男優賞受賞。97年から世界陸上のメインキャスター。ダイビング、国際レースライセンスの資格も持つ。