カラオケ居酒屋がずらりと並ぶ大阪市西成区の飛田本通商店街(通称・動物園前一、二番街)。ここに中華料理店付きのマンションを建設する計画が進んでいる。 計画しているのは、中国人経営者らでつくる親睦団体「大阪華商会」の会長で、不動産会社社長の林伝竜(りんでんりゅう)さん(60)。 カラオケ居酒屋の草分けで、西成で商売をしたい中国人にとっては「ドン」のような存在だ。 林さんが計画するのは、8階建てと14階建ての賃貸マンション。ともに建築確認申請を出し、許可待ちという。 8階建ては1、2階、14階建ては1階に本格的な中華料理店を入れたいという。 大阪府警西成署によると、商店街も含めた釜ケ崎かいわいには約250店のカラオケ居酒屋が集中している。 夜はにぎわっているが、昼の人通りは多くない。昼の客をいかに増やすかが商店街の課題になっていた。 林さんは「この商店街にもっと若い人が増えてほしい。マンションができ、本格的な中華料理が食べられれば日中も人が増える。ミナミの繁華街に出なくても満足できるまちにしたい」と狙いを話す。 林さんは2019年、商店街の入り口に中華門を造り、カラオケ居酒屋を中華料理店に変えるという「中華街構想」を発表した。 しかし「中華門は商店街全体のイメージを変えてしまう」と反発や戸惑いの声があがり、構想は進まなかった。 一方、今回はマンションの下を中華料理店にする計画で、商店街からは期待の声も上がる。 飛田本通商店街振興組合の理事長で洋服店を営む村井康夫さん(74)は「これだけ外国人の在住者や観光客が増えているから、昼から客が集まる飲食店ができるなら喜ばしい。夜にカラオケ居酒屋がにぎわっても、夜は飲食店以外は閉まるので、ウィンウィンの関係にはなりにくかったからね」と話す。 西成に来て四半世紀以上が過ぎ、「ここは第二のふるさと」と話す林さん。マンションに新たな住民が入居し、本格中華を食べ、いくつもの交流が生まれる。それが新たな夢だという。(市原研吾) カラオケ居酒屋 大阪市西成区の飛田本通商店街に集中し、1曲100円の手頃さが人気となっている。多くは中国人が経営し、先駆けとされる林伝竜さんは2005年ごろに店を出した。大阪市によると、店が増え始めたのは12年ごろ。200万~250万円の初期費用があれば開店でき、林さんにノウハウを教わって開店する人が相次いだ。大阪府警西成署によると、このかいわいで約250店が営業する。 店の女性が「1杯いただいてよろしいでしょうか」と繰り返し求めて高額を払わせるなど、一部の店では時折トラブルも起きている。西成署は1月、客の横でお酒をついだりカラオケでデュエットさせたりしたとして、中国人の経営者と店長を風営法違反(無許可営業)の疑いで逮捕した。