日本人の海外旅行先、その人気ランキングでトップに挙がるのが「韓国」だ。その理由は〈日本から近い〉〈少ない旅費で行きやすい〉など、今の日本人にピッタリの「安・近・短」がそろう。 一方、昨今の円安や物価の高騰などで、日本人の海外旅行の動きはいまだ鈍い。外務省が発表した旅券統計によると、’24年、日本人のパスポート保有率が「17.2%」にとどまった。出国者数も約1300万人で、コロナ前(’19年)の約2000万人にまだ及ばない。 今、日本発着の国際線に乗ると、乗客のほとんどが訪日外国人(インバウンド)ということも。ただし、韓国便は別だ。 コロナ禍が明けた直後から増え始め、韓国便は今も日本人が多く、ソウルの街を歩くと、場所によっては日本人だらけということも。しかもその大半が女性である。’24年12月の日本人出国者数が約120万人、そのうち韓国が25万人超と、およそ4分の1を占めている。 ◆「韓国語を学びたい!」増加する日本人女性「留学生」 昔の韓国旅行といえば、ソウルの明洞や東大門市場など観光スポットを巡って買い物し、焼肉やビビンバといった韓国料理を味わうのが定番だった。 ’00年代の韓流ブーム以降、ドラマのロケ地巡り(聖地巡礼)やK-POPグループのコンサートなどを目的に渡韓する日本人が増えた。明洞の土産店や仁川空港の免税店などには韓流スターやK-POPグループのグッズがずらりと並び、当時は今以上に大量買いする日本人女性も多くいた。 K-POPグループの推し活で韓国へよく行く女性は、飛行機はLCC(格安航空会社)、宿泊先はゲストハウスが主で、「ホテルに泊まる費用ももったいない」と語る。ほぼ毎月渡韓する別の女性は、今回はドラマのロケ地巡りを目的に仁川空港と地方都市の水原(スウォン)を往復し、ソウルには立ち寄らなかったという。 また、「美容大国」と言われる韓国へ毎月通って美容医療を受ける、現地で韓国コスメを買い集める女性も少なくない。ソウルに長年住む日本人からは、K-POPや韓流ドラマなどの影響で韓国語を学びたいと留学する日本人女性が近年かなり増え、「昔では考えられなかった現象」とも聞いた。 ◆お金はないけど……「海外旅行に行きたい!」 ただ単に〈海外旅行がしたい〉という比較的ライトな層にも今、韓国は人気。「旅費の総額が安い」のに加え、日本から近いので休暇のやりくりがしやすいのも主な理由だ。 韓国行き航空券の運賃は今、最安で往復総額2~3万円前後。コロナ前より上がって高止まりしているが、LCCや地方空港発着の便もたくさん飛んでおり、国内各地から行きやすいことに変わりない。ホテルは、ソウル中心部の3つ星クラスでおおよそ1泊1~1.5万円ほど、閑散期はそれ以下でも見つかり、ゲストハウスなら1泊2~3千円程度もある。 物価はコロナ前より上昇しているものの、外食は約1000円、カフェのコーヒーが1杯約500円など、欧米ほど高くない。しかも、地下鉄・バスが初乗り約140円(1350ウォン、ICカード利用時)で、タクシーも日本より安く、交通費の負担は少ない。 今の海外旅行は、欧米だと1週間で40~50万円、東南アジアでも4、5日で10~15万円ほどかかる。これと比べると、韓国ははるかに安い。 JTBによる『2025年(1月~12月)の旅行動向見通し』によると、海外旅行に行かない理由は〈旅行費用が高いから〉〈家計に余裕がないから〉〈円安だから〉がトップ3だ。金銭的な問題が上位に並ぶところ、今の日本人の生活面での余裕のなさが海外旅行にも影響しているといえるだろう。