長期連載されているマンガは、絵柄が変わらないことは稀で、時代や作風に合わせて変化する作品が多いです。なかには、同一キャラが別人に見えるほど、大きな変貌をとげた作品もありました。 途中で絵柄が変わった作品といえば、「亀有公園前派出所」に勤める「両津勘吉(以下、両さん)」を中心にギャグが繰り広げられる、秋本治先生の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は外せません。1976年から2016年まで「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、現在は1年に1回ほどのペースで新作読切が掲載されています。 本作は約40年間連載していたこともあり、時代の流れとともに大きく絵柄が変化しました。序盤は1970年代によく見られた劇画調で描かれ、両さんも今と比べるとかなり怖い顔をしています。しかし、時代とともに線が細くなっていき、シンプルな絵柄へと変わりました。 絵柄の変化は作中でも言及され、連載最終話「40周年だよ全員集合の巻」で初期のキャラが登場した際は、性格や絵柄の変わりように派出所のメンバーが疑問を抱きます。それに対し両さんは、「当時の絵はもう描けない 40年前だし」と答えていました。 また、1991年から1996年まで「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された『行け!! 南国アイスホッケー部』(作:久米田康治)も、途中で絵柄が変わった作品として有名です。初期は、あだち充先生や江口寿史先生たちの絵をルーツとしたリアル寄りの絵柄ですが、次第に線が細くなってデフォルメ化され、今の久米田先生らしい絵柄へと変化していきました。 この絵柄の変化は、過去の久米田先生のインタビューによると、印刷で線が潰れることや作風の変化が理由だと語られています。本作はアイスホッケーを中心としたスポーツコメディーから、下ネタを中心としたギャグへと作風が変化しました。しかし、下ネタで筋肉などを描くと生々しくなることから、絵を簡素化させたそうです。 ほかには、女性警察官コンビの活躍を描いた藤島康介先生の連載デビュー作品『逮捕しちゃうぞ』も途中で絵柄が変化しています。 序盤は目が小さくて輪郭は細く、髪も少しだけハイライトが入ったベタ塗りで描かれていましたが、終盤では目が大きくなって輪郭は丸みを帯び、髪のハイライトもふんだんに入れられるようになりました。また「アフタヌーン 2023年2月号」(講談社)では、約30年ぶりに読切の新作エピソードが掲載され、長期間空いたこともあってかさらに絵柄が変化しています。 この変貌には、ファンから「初期の頃と現在の絵柄の変化を見るとギャップがすごい」などの声があがっていました。なお、藤島先生は本作の連載中に『ああっ女神さまっ』の連載を開始しており、こちらも絵柄が変化していることで有名です。