埼玉県川口市や蕨市に集住するクルド人に対する「ヘイトスピーチ」が相次ぐ中、さいたま地裁は昨年11月21日、日本クルド文化協会(川口市)周辺でのデモや街頭宣伝などを禁止する仮処分を決定した。 この時点までに10カ月にわたってデモは繰り返されていた。神奈川県の男性が代表をつとめる団体がデモ実施を予告したことを受けて、裁判所に仮処分を申し立てたのが、クルドヘイト対策弁護団に名を連ねる金英功(キム・ヨンゴン)弁護士だ。 蕨市出身で、大学進学まで近辺で育った。地域に密着した仕事ができればと考えて、3年前、蕨市で法律事務所を開設した。だが、幼少期も、事務所を開設した当初も、地元でクルドの人たちの言動を意識することはなかったという。 「在日という立場に生きることの難しさを感じていた時期もありました」 穏やかな口調でそう話す金さんは、蕨市・川口市でのデモや、SNS上で広がるフェイク情報に基づくヘイトスピーチに法律家としてどう向き合おうとしているのか。クルドヘイト対策弁護団に参加した経緯や弁護士を志した背景を聞いた。(取材・文/塚田恭子)