北海道・知床半島沖で死者、行方不明者26人が出た観光船「KAZU I(カズワン)」沈没事故は23日で発生から3年となった。 業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」(斜里町)社長の桂田精一被告(61)は、遺族が起こした民事訴訟で責任を否定。刑事裁判でも全面的に争うとみられるが、初公判のめどは立っていない。 桂田被告は、事故からおよそ1年半が過ぎた昨年9月、第1管区海上保安本部に逮捕され、翌月、釧路地検が起訴した。釧路地裁は初公判前に争点を絞り込む公判前手続きを行うことを決めたが、手続きの第1回期日は指定されていない。 操船に関与していない経営者の刑事責任が問われた異例の海難事故。「素人」を自認する桂田被告は捜査段階で否認し、今年3月に札幌地裁であった民事訴訟の1回口頭弁論では「自身に過失はない」と主張した。 事故を巡り、運輸安全委員会は、船前方のハッチと窓から浸水し沈没した可能性が高いとする最終調査報告書を公表。地検は起訴状で、事故当日は基準を上回る天候の悪化が予想され、死傷事故を発生させる恐れを予見できたにもかかわらず、被告は、出航や航行継続の中止を船長に指示する義務を怠ったとした。 桂田被告側の詳細な主張は不明だが、運輸安全委の調査に「運航は船長=死亡=の判断に任せておけばよいと思った」と説明。被告本人も出廷した民事訴訟の弁論では、当日午前の気象条件は基準内で、船長から天候が悪化したら引き返す「条件付き運航」をする旨報告を受けていたと訴え、遺族側の請求を棄却するよう求めている。 「最低でも今年度内には結論を出したい」。そう語ったある検察幹部は「過失事件は争点が幅広い。弁護側がどう反論してくるのかが読めない」とも口にした。公判が始まっても、判決まで時間を要す可能性は残る。