(CNN) 米ロサンゼルスで俳優キアヌ・リーブスさんから盗まれた腕時計6本が、9000キロ近く離れたチリの首都サンティアゴにある米国大使館で今週、連邦捜査局(FBI)に引き渡された。所有者に返還される予定。 大使館によると、これらの高級腕時計はサンティアゴ東部で発生した住宅侵入事件に関する警察の広域捜査中に見つかった。当局は犯罪組織を標的としていたが、その影響がハリウッドにまで及ぶとは想定していなかった。 チリ捜査警察幹部の強盗・犯罪介入捜査部隊を統括するマルセロ・バラス副本部長がCNNに明らかにしたところによれば、当該の犯罪組織は2023年にロサンゼルスで強盗を犯した。事件が報道されると一部の構成員は国外へ移住し、また同じ手口で犯行に及んだという。 サンティアゴでの家宅捜索の間、捜査官はペニャロレン地区の一軒家で容疑者の一人と時計を含む貴重品を発見した。時計の一つには銘文が刻まれていた。 「『ジョン・ウィック』の映画シリーズが好きだった刑事の一人は、その時計に見覚えがあった」とバラス氏。刑事はリーブスさんが同作のスタントマンたちに同じ時計を贈っていたという話を読んでいた。そこで警察はスタントマンたちに連絡を取り、時計の照合を行った。 21年、リーブスさんは「ジョン・ウィック:コンセクエンス」で自身のスタントマンを務めたクルー4人にロレックス・サブマリーナーを贈呈した。それぞれの裏蓋(うらぶた)には名前や感謝の言葉、そして自身を含めたとみられる「ジョン・ウィック・ファイブ」などの文言が刻まれている。 クラウディア・バラサ検察官は大使館の引渡し式典で、リーブスさんの自宅に侵入した犯罪組織と、時計をチリに持ち込んだグループが同一であるという証拠はないと述べた。 しかし、バラス氏は、当局が強盗を実行したとされる人物が使用していた携帯電話も押収したと指摘。その携帯電話には問題の時計、銃、そしてリーブスさんの運転免許証が写った、米国で撮影された写真が保存されていた。これらの写真はリーブスさんの自宅で撮影されたものとみられる。 バラス氏は法的な問題として、リーブスさんがそれらを自身の所有物だと確認するまで待たなければならなかったと説明した。リーブスさんはロサンゼルス警察署で当該の写真を見て確認を行ったという。 皮肉なことに、「ジョン・ウィック」シリーズでリーブスさんは自宅に強盗に入られる元殺し屋を演じている。23年の事件以外にも、シリーズ第1作公開の数カ月前の14年、ロサンゼルス警察はリーブスさん宅に3日間で2件の侵入があったと報告している。これらの事件では強盗は起きていなかった。 チリ警察犯罪捜査局によると、23年の強盗事件でリーブスさんが被った損失は700万ドル(約10億円)に上るとみられている。 CNNは事件に関する詳細情報を得るためにFBIに連絡を取った。 捜査の柱の一つは、盗難品がどのようにしてチリに持ち込まれたかの解明だ。警察犯罪捜査局によると、犯罪組織は小包システムを利用するか、犯罪歴のない観光客を通して品物を送るのが一般的だという。そのため当該の腕時計は、疑いを持たれていない旅行者の腕に装着されていたため、空港の保安検査を容易に通過できた可能性がある。 犯罪組織の構成員とされるその他の容疑者の運命は様々だ。ロサンゼルス強盗事件の容疑者の兄弟は、脅迫を伴う強盗と税関詐欺の罪で有罪となった。バラス氏によると、別の容疑者は犯罪組織間の抗争で死亡した。捜査官はまた、1人は米国に渡航して犯罪行為を続けたと説明。さらにもう1人はアルゼンチンに渡り、ブエノスアイレスで家宅への強盗の容疑で逮捕されたという。