【プレイバック’95】「スーパーナンペイ事件」ほんの数分間で3人の女性を射殺した犯人の〝冷血〟

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックを今ふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は30年前の1995年月8月15・23日号掲載の『またも市民が犠牲に 八王子〝スーパー3人射殺事件〟引き起こした銃社会の戦慄』を紹介する。 先日、『スーパーナンペイ事件』が発生から30年を迎えた。1995年7月30日の夜、東京・八王子のスーパーの2階事務所内でパート女性とアルバイトの女子高生2名の計3名が射殺された未解決事件だ。『FRIDAY』は発生直後の現場の様子を取材していた(年齢・肩書はすべて当時のもの。《》内の記述は過去記事より引用)。 ◆「てっきりぬいぐるみかなにかだと」 《第一発見者の60代男性のAさんは、最初、室内にころがっているのが遺体だとは信じられなかった。 「てっきり、ぬいぐるみかなにかだと思った。ところがよく見ると、壁にもたれているのは稲垣さんだったんです。顔中が血まみれでとても正視できず、目を逸らせると女の子が二人倒れているのが目に入って……」》 知らせを聞いて駆けつけた捜査員も思わず息を呑むほど、現場の様子は凄惨をきわめていた。 《2階事務所内ではパート従業員の稲垣則子さん(47)が座り込むようにして事切れており、血の海となった床にはアルバイトの女子高生、矢吹恵さん(17)、前田寛美さん(16)がうつ伏せに倒れていたのだ。 二人は粘着テープで腕をつながれて縛られ、口にもテープを貼られたうえ、後頭部を一発で撃ち抜かれていた。稲垣さんも頭部に2発の銃弾を受けており、それ以外の外傷がないことから、犯人は至近距離から無抵抗の3人を、非情にも次々に射殺したものと推察される》 ◆一般人が銃犯罪に巻き込まれる時代に 第一発見者のAさんは稲垣さんとは飲み友達で午後9時15分に「仕事が終わったから迎えに来てほしい」と連絡を受けていた。それからAさんが現場に到着するまでの10分足らずの間に犯人は3人を殺害して逃走したことになる。作家の佐木隆三氏は事件について次のように語っていた。 《「私も様々な殺人事件を見てきたが、これほど短時間にいとも簡単に3人も殺した事件は異例中の異例。覚醒剤中毒者の犯行とも明らかに違う。銃を威嚇ではなく最初から殺人目的で使ったという点で、 日本の犯罪史上類例を見ない特殊な事件です」》 ギャングでも警察でもない一般人が銃で殺害される──まるで海外での出来事のような荒っぽい手口の犯罪が日本で起きてしまった背景には「銃社会化」があった。前出の佐木氏も記事では「暴対法施行で数年前から暴力団が次々と銃を手放し、素人でもカネさえ出せば銃を手に入れられるようになった」とその背景についてコメントしていた。 1995年上半期に押収された銃は前年同期よりも16%多い931丁で、その4分の1が一般人から押収されたものだった。1994年の秋には千葉県のファミレスでアルバイト中の女性が強盗に撃たれて亡くなる事件も発生。日本も一般人が銃犯罪に巻き込まれてしまう社会となったことを象徴する事件だった。 ◆銃による犯罪は減少したが…… 1995年当時に不安視された銃犯罪の多発は、その後’00年代初頭をピークに’10年以降は年間10~20件ほどの低い水準で推移している。 その一方で、事件の捜査は難航した。発生時刻前後にスーパーやその周囲では怪しい男や不審な車などの車両が複数目撃されていたが、犯人の特定には至らなかった。事件が起きたスーパーのセキュリティは以前から問題視されていたという。これまでにも事務所に空き巣が入られたことがあったり、この当時に多摩地域でスーパーを狙った拳銃強盗が多発していたことから、当初は強盗目的の犯行とみられていた。 しかし、稲垣さんであれば金庫を開けることが可能だったにもかかわらず、金庫の中の500万円の現金は手付かずだった。さらに弾丸がすべて被害者の脳幹を撃ち抜いており、怨恨による殺害目的の犯行ではないかとの見方も出てきたようだ。 犯行に使用された銃はフィリピン製の回転式拳銃『スカイヤーズビンガム』。’09年には事件で使用されたものと思われる拳銃を所持していた暴力団員が逮捕されたが、この男は「’08年ごろに知人からもらった。誰かは言えない」と供述し、事件への関与も否定した。捜査本部はフィリピンへ捜査員を派遣して入手経路を調べたが、特定することはできなかった。 同じく’09年には日本人と中国人による強盗団のリーダーだった男の証言から、一味だったカナダ国籍の中国人の男への疑いが浮上した。捜査本部は男が他人名義の偽造パスポートで出国したとする旅券法違反容疑で逮捕状を取り、日本へ移送して取り調べたが、男は事件について「知らない」と話したという。 時効成立直前の’10年に時効が撤廃されたため、捜査は継続されて現在に至っている。これまでにのべ22万6000人以上の捜査員が投入されたが、犯人につながる有力な情報はつかめていない。捜査本部は事件当日に犯人を見た可能性があるという「閉店間際に来店した若いカップル」、「スーパー2階の事務所の灰皿にあった11本のたばこを吸った女性」など、現在も広く情報提供を求めている。 突然、未来を断たれることになった被害者たちの無念を晴らす日が、一日も早く訪れるのを願ってやまない。

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