【社説】米で拘禁された韓国人労働者の帰国が問題の終わりではない

米ジョージア州の現代自動車グループとLGエナジーソリューションのバッテリー合弁工場建設現場で米移民・関税執行局(ICE)に逮捕・拘禁された韓国人300人が早ければ11日にチャーター便で帰国する。4日に事件が発生して1週間ぶりだ。韓米当局の後続措置で国民が安全に帰ってくるのは幸いなことだ。 しかし工場を作るために米国に行った韓国人が鎖に縛られ劣悪な拘禁施設に連行される場面は両国関係に深い後遺症を残した。事件直後にサムスン電子、SKハイニックス、SKオンなど大規模対米投資を進めている企業は出張を全面的に取り消し、派遣人材に対しては帰国指示を出した。ビザ問題が解決されなければ投資執行自体がすべてストップするほかない。財界では工事遅延と追加費用負担から投資自体を原点から見直さなくてはならなかったり、米国で工場を作って捕まるよりはいっそ関税を受け入れる方がいいという不満の声があふれている。 李在明(イ・ジェミョン)大統領はきのう閣議で「韓国国民と企業活動に不当な侵害が加えられることが再発しないよう望む」として迅速な制度改善を指示した。今回のような事態が再発しないようにするなら以前から存在するビザ問題を根本的に解決しなければならない。大幅に増えた対米投資の現実に合わせ短期就業ビザ(H-1B)の割り当てを受けたり、韓国人専門職就業ビザ(E-4)を新設するなど、実質的な解決方法を探さなければならない。 今回の拘禁事件が韓米関税合意の後続交渉に対する懸念が高まる時点で起きた点も注目しなければならない。外交部の趙顕(チョ・ヒョン)長官は、国会で両国が合意した対米投資3500億ドルのパッケージ後続交渉と関連して「米国の要求をそのまま受け入れれば国民に大きな負担となるため受け入れないでいる」としながら最近明文化された米日関税後続合意を例に挙げた。これによれば日本が提供する5500億ドルの投資先はトランプ大統領が決め、投資先が決まれば45日以内に執行しなくてはならない。これを履行しなければ合意した相互関税15%より高い関税を払うことになる。投資収益も日本の投資金が回収されるまでは両国が収益の半分ずつを、回収後は米国が90%を持っていくなど米国に一方的に有利になっている。米国が韓国にも同様な要求をしているという話だ。場合によっては対米世論悪化と韓米関係悪化まで招きかねない過度な要求だ。 その上在韓米軍の規模と役割を調整する「同盟現代化」など韓米関係に重大な影響を及ぼす事案も協議中だ。拘禁された労働者の帰国が韓米の懸案をめぐるリスク管理の終わりではない点で懸念が大きい。韓国政府は国民の安全と企業活動の保障を最優先とすべきで、米国もまた、同盟を尊重する姿勢を見せることを望む。

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