米国ジョージア州の現代(ヒョンデ)自動車・LGエナジーソリューション(LGエンソル)合作バッテリー工場での拘禁・逮捕事態はひとまず収束したものの、現場の懸念は今も完全には払拭されていない。一部の労働者が復帰し、ドナルド・トランプ米国大統領も「問題は解決した」と火消しに乗り出した状況だ。しかし、業界からは正常化に向けた実質的な解決策は出ていないという声が上がっている。 ◇“ジョージアの悪夢”が本当に終わるためには 20日、韓国財界によると、該当工場に最近、短期出張・商用ビザ(B-1)および短期観光ビザ(B-2)の再発給を受けて復帰したLGエンソルおよび協力会社の技術者は100人未満だ。正常運営時に比べて3分の1水準にとどまっている。最大の理由は、取り締まり権限を持つ米国移民・関税執行局(ICE)が態度の変化を示す新たな立場を出していないためだ。これまで韓国外交部と米国務省は「B-1ビザでも設備の設置が可能」という指針を共有してきたが、現場での取り締まり権限を持つICEがこれを「問題なし」と公式に確認したことはない。B-1ビザの発給・解釈は国務省の所管だが、実際の摘発と取り締まりはICEが最終権限を持っている。 実際、B-1および電子渡航認証(ESTA)で可能な業務範囲は逮捕当時にも米政府内部の指針として明確に存在していた。米国税関・国境取締局(CBP)は、B-1ビザで可能な活動に「外国企業から購入した設備の設置・サービス・修理」を明記しており、米国務省も同じ活動をESTAでも実施できると案内していた。それにもかかわらずICEは9月の拘禁当時、こうした指針を現場で適用しなかった。業界がICEの明確な立場の変化と新たな指針を首を長くして待っている理由でもある。 外交チャネルでは進展もあった。両国は外交部と国務省による「ビザワーキンググループ」を通じて、既存のビザ所持者が行動できる許容範囲に関するガイドラインを策定したと明らかにした。企業からの要請で、外交部はこうしたガイドラインを駐米大使館および米政府を通じてICEに伝えたともいう。さらにトランプ大統領は19日(現地時間)、「(韓国の技術者を)追い出せと言われたので、『バカなことをするな』と言った。それで問題を解決した」と発言した。 しかしこうした外交的メッセージにもかかわらず、現場の不安感は消えていない。ICEレベルでの指針が依然として明示されていないため、企業とエンジニアは「いつまた取り締まりが行われるかわからない」という不安を拭えずにいる。このためLGエンソルは協力会社に「全員復帰」ではなく「希望者のみ復帰」の方針を維持している。協力会社所属の一部のエンジニアは拘禁のトラウマで復帰を断念したり、会社を辞めるケースも出ている。ある協力会社の幹部は「技術者も家族も会社も確答を求めているが、今は『当分取り締まりはないだろう』という漠然とした期待以外、明確な解決策がない」と語った。 ◇「時間も金」その理由は? 工程の遅延に対する懸念も消えていない。該当工場ではバッテリー組立の核心であるノッチング(電極の精密切断)とスタッキング(正極・セパレーター・負極の積層)装置が試運転直前の段階だった。両工程とも熟練技術者が直接セッティングと調整を行わなければならない「核心人材投入区間」であり、短期の代替や新規教育では埋めることが難しい。復帰の遅れが生産スケジュール全般に影響を及ぼさざるをえない構造だという意味だ。このため業界では「当初は最低2〜3カ月程度と見込まれていたスケジュールの遅延が、現在では先が見通せない」という話も出ている。量産が遅れれば、米国の先端製造生産税額控除(AMPC・2032年終了)の恩恵も減る。LGエンソルは売上減、現代自動車は電気自動車の現地サプライチェーン戦略の遅延、協力会社は代金の支払い遅れなど、複合的なリスクが大きくなる構造だ。 今年9月、ICEは合作工場の建設現場を急襲し、韓国人労働者317人(LGエンソル46人・協力会社204人・現代エンジニアリング協力会社67人)を不法就労の疑いで逮捕・収容した。一部の労働者が手錠をかけられたまま連行される様子が公開され、劣悪な収容施設の実態も伝えられた。政府間の交渉を経て、1週間で労働者たちは帰国した。