尹大統領摘発へ韓国捜査機関が駆け引きで混乱 背景に前政権断行の検察改革

【ソウル=時吉達也】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の内乱罪での摘発に向けてそれぞれ初動捜査を展開していた検察、警察などが合同捜査に向けた協議を始めた。捜査権限や能力で互いの「弱点」を補強し捜査を加速させるか注目されるが、11日に設置が発表された新たな捜査本部は検察が除外されるなど混乱は収まっていない。 検察当局は、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の友人による国政介入事件以来8年ぶりとなる特別捜査本部を設置。戒厳宣布を尹大統領に進言したとされる金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相を逮捕し、捜査を主導する。 一方、「捜査の信頼性や公正性」を問題視し、検察からの合同捜査の提案を断ったことを8日に明らかにしたのは警察当局だ。警察庁の特別捜査団は同日、国防省と金氏の自宅の家宅捜索を実施した。 混乱の背景には、文在寅(ムン・ジェイン)前政権で断行された捜査機関改革がある。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が検察捜査で自殺に追い込まれたとみる革新系支持層の「悲願」を受け、検察の捜査権限の多くが警察に移譲されていた。 一方、戒厳宣布を解除しようとした国会議員らの出入りを不当に規制しようとしたとして、警察当局も幹部らが捜査の対象となり、「身内捜査」との批判が上がる。政府高官や国会議員、検察に対する捜査を担い、文前政権が新たに発足させた高位公職者犯罪捜査処(公捜処)も、トップ人事が難航するなどして運営が停滞し、捜査能力に不安を抱えている。 来年以降、国会の承認に基づき政府から独立した立場で捜査を行う「常設特別検察」が発足すれば一本化される可能性が高いが、それまでは各機関の駆け引きが続きそうだ。

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