暴行動画の拡散、なぜ? 救済されぬいじめへの不満背景か

暴行動画の拡散が目立つようになったのは、X(旧ツイッター)で影響力を持つ配信者が加害者を非難しようと、入手した動画を相次ぎ投稿したことがきっかけとみられる。 多くの人が共感して拡散に加担したとみられ、SNSには「証拠は拡散した方が早い」などと警察に捜査を促すような書き込みもあった。 発端は、昨年12月に栃木県立高校で撮影された約9秒間の映像。男子生徒がトイレで、別の生徒に一方的に暴行を加える動画がXなどで広まった。県教育委員会は心身に重大な被害を受けた疑いがある「いじめ重大事態」と認定し調査に乗り出した。 大分市では、「いじめ動画が投稿されている」との情報提供で、市内の中学校での暴力行為が発覚した。動画は複数本、拡散され、同校はそのうちの1本を把握していたが、「生徒同士のけんか」として当初、市教委に報告しなかった。 暴行動画をきっかけに、警察が捜査を始める事例も相次ぐ。栃木県立高校のケースで県警は、傷害容疑で加害生徒を書類送検。熊本県警は1月16日、商業施設で男子生徒が暴行を受ける動画の加害者とされる15歳の少年を同容疑で逮捕した。福島県会津若松市でも今月、土下座した女子生徒の顔面を蹴る動画が拡散し、県警が捜査を始めた。 過熱する暴行動画の拡散について、メディア法や情報法に詳しい慶応大の水谷瑛嗣郎准教授は「怒りや憎しみを刺激する投稿は拡散されやすい。権利侵害がある場合には、プラットフォーム事業者の適切な対応が期待される」と指摘する。 「いじめへの(学校側などの)対応に不満を持つ人が拡散に寄与しているのでは」とも分析。被害者を救済するシステムが十分に機能していないことへの危惧が背景にあるとしている。

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