尹大統領を起訴、韓国の現職では初 内乱罪

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)が26日、内乱罪で起訴された。検察当局は、昨年12月の非常戒厳の発令が犯罪に当たるとしている。韓国で現職大統領が起訴されたのは初めて。 非常戒厳は短時間で解除されたが、韓国で前例のない政治危機を招いた。 尹氏をめぐっては、検察が拘束の延長を求めていたが、ソウルの裁判所は25日、これを認めなかった。そのため検察は27日までに、尹氏を起訴するか釈放するか決める必要があった。 起訴を受け、最大野党「共に民主党」の韓民洙(ハン・ミンス)報道官は、「内乱の首謀者の処罰がいよいよ始まる」と記者会見で述べた。 一方、尹氏の弁護団は起訴を批判し、「捜査の違法性」を明らかにすると宣言。「検察は重大な間違いを犯し、CIO(高位公職者犯罪捜査庁)の起訴部門、および政治的利益を得るための道具に成り下がった」とした。 韓国では、内乱で有罪とされれば終身刑または死刑に処せられる。ただ、死刑はここ数十年執行されておらず、後者の可能性は低い。 尹氏についてはこれとは別に、憲法裁判所が、正式に罷免するか、職務復帰させるかを審理している。 尹氏は昨年12月14日、国会によって弾劾され、職務停止となった。その後、捜査当局が非常戒厳の発令をめぐって捜査を進めているが、尹氏はほとんど協力していない。 今月19日には、ソウルの裁判所が尹氏の逮捕状を出し、捜査当局が尹氏を逮捕した。尹氏の拘束は、それ以前の同15日から続いており、今後も継続される。 今回起訴されたことで、尹氏は金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相や軍の司令官らとともに、裁判を受けることになった。前国防相らはすでに、尹氏が全権掌握を計画・実行するのを手助けした罪で起訴されている 尹氏は昨年12月3日、テレビ演説し、北朝鮮に同調する「反国家」勢力から国を守るためだとして、非常戒厳を宣布した。 尹氏は当時、国会で予算案を通せず手詰まり状態にあった。汚職スキャンダルにも悩まされ、複数の閣僚が捜査されていた。 非常戒厳を出したことで、軍は国会の全活動の停止を発表し、メディアを統制しようとした。 この動きに対し、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、国民に国会での抗議を呼びかけた。また、国会議員らに、非常戒厳の解除を直ちに決議するよう求めた。 国会には議員190人(与党議員も含む)が参集。尹氏による発令から2時間足らずで、非常戒厳の解除を全員一致で決議した。 この間、ライフル銃を携行した兵士らが国会の建物内に破壊された窓から入るなど、劇的な対立が続いた。国会前には市民ら数千人が集まり、兵士らの行動を阻止しようとした。 この事件は過去数十年で最悪の政治危機を引き起こし、国内を二極化させている。 今月24日には、尹氏を強く支持する数万人が集会を開き、尹氏の釈放と職務復帰を求めて抗議の声を上げた。 今後、憲法裁が、国会による弾劾を妥当と判断すれば、尹氏は罷免され、60日以内に大統領選挙が実施される。 検察はBBCのコメントの求めに、すぐには応じなかった。 (英語記事 Impeached S Korean president charged with insurrection)

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