「興奮した人3人が急に道をふさいで唾を飛ばしながら言いました。『ゴートゥーホーム』、『チャンケ(中国人を蔑む言葉)』『イ・ジェミョン(最大野党「共に民主党」の代表)』のような言葉を(聞いたことを)覚えています」 中国人留学生のAさんは先月4日、ソウルの漢南洞(ハンナムドン)を通り過ぎる途中、見知らぬ人から暴言を浴びせられた。韓国人の友人と互いの言語を教える「言語交換(ランゲージ・エクスチェンジ)」をした後、いつものように中国語で冗談を交わしながら梨泰院(イテウォン)駅に向かう途中だった。「早くそこを抜け出そうと思って、友達と駅までひたすら走りました」。その日は漢南洞の官邸周辺に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持者約3万5千人(警察非公式推算)が集まり、逮捕阻止集会を開いた日だった。集会のあちこちには「CCP(中国共産党)アウト」などと書かれたプラカードが掲げられていた。 12・3内乱事態以後、尹大統領側と一部の与党議員が「不正選挙への中国介入説」、「弾劾要求集会への中国人の組織的参加説」など荒唐無稽な主張を展開し、支持者の中では「中国」と「中国人」に対する嫌悪(ヘイト)をあらわにし、威嚇を加える人たちが増えている。ヘイトにさらされた中国人たちは20日、ハンギョレに「(彼らから)隠れて避ける」息を殺した日常を伝え、恐怖を訴えた。 特に支持者集会の現場周辺が仕事場や生活空間である人々が感じる恐怖はさらに大きい。憲法裁判所周辺の飲食店で働く中国同胞のHさん(54)は、「60〜70代に見える男性が食堂に来て、私の話し方を聞いて『中国出身ではないか、不正選挙についてどう思うか』と訊いてきた。周りが(その男性を)止めてくれたが、怖かった」とし、「通勤途中にも集会で、中国人に対し『刺殺』、『踏み潰せ』という声がよく聞こえてくるため、その近くはできるだけ近づかないようにしている」と語った。 ユーチューブとX(旧ツイッター)などでは、尹大統領支持者たちが集会場所付近で中国人を威嚇するおぞましい映像が多数投稿されている。集会場所に流れ着いたとみられる中国人女性2人を押したり、「イーアルサンスーと言ってみろ」と怒鳴りつけながら嘲弄するやり方だ。 さらに大きな問題は、不当なヘイトに対抗すればさらに大きな脅しが押し寄せてくることだ。Xで自分の母親が中国同胞であることを明らかにしたあるネットユーザーが「ヘイトを止めてほしい」という趣旨の文を投稿したところ、1時間で100件以上の侮辱的なメッセージが届いた。「破墓(過去に書いた投稿を調べ、中国と関連があるかどうかを確認する作業)する」、「首を洗って待ってろ」など、荒々しい言葉を並べたものだった。安山(アンサン)帰在韓同胞総連合会のチョン・チュンソク会長は、「中国出身の同胞たちに、(デモの場所に)絶対に行かず、参加するのは夢にも思うな、反逆者にされると大変だと呼びかけている」と語った。 移住民の人権を擁護する韓国人が標的になる場合もある。イ・ジンヘ弁護士は「中国人ヘイトを止めろ」という内容のコラムを書いた後、会社と略歴などを調べた掲示文がオンラインコミュニティに公開される「身元ばらし」に遭った。イ弁護士はハンギョレに「ますます移住民の人権について発言しづらい雰囲気になるのではないかと懸念される」と話した。 西江大学のイ・ウギョン教授(中国文化学科)は、「過去には、中国を嫌う感情がTHAAD(高高度防衛ミサイル)問題や文化のあつれきなど、特定のイシューを中心に現れたとすれば、最近は根拠のない事実に基づいて中国人そのものを嫌悪するところまで進んだ」とし、「理性の領域を越えて宗教の領域に近く、説得が容易ではなく、行動も一層激しい」と指摘した。 チョン・ボンビ記者 (お問い合わせ [email protected] )