京都の被告保釈率40%、全国2位 「逃走や別の犯罪の可能性もあるが」原則は必要最低限

保釈中に民家から現金約4150万円や高級品を盗んだとして、京都府警捜査3課と山科署は2月20日、住居侵入と窃盗の疑いで、住所不定、無職で被告の男(27)=別の窃盗と大麻取締法違反の罪で公判中=を逮捕した。 逮捕容疑は、昨年12月7日午後0時10〜20分ごろ、京都市山科区の自営業男性(60)の自宅に侵入し、現金約4150万円と、腕時計など16点(時価約650万円相当)を盗んだ疑い。 同署によると、容疑者は「身に覚えがありません」と容疑を否認しているという。府警は被害品の一部を同容疑者の関係先から押収した。 容疑者は、2023〜24年に別の窃盗と大麻取締法違反の罪で京都地検に起訴され、24年2月に京都地裁の保釈決定を受けて保釈された。しかし、同9月に地裁で予定されていた判決公判に出頭しなかった。 このため府警が指名手配し、今年1月17日に松江市で容疑者の身柄を確保。正当な理由なく公判に出頭しなかったとして、刑事訴訟法違反(公判期日への不出頭)容疑で逮捕し、地検が起訴していた。 京都地裁は、保釈中の被告が逮捕されたことについて「コメントは差し控える」としている。 「理解やケアに社会が目を向けるべき」 刑事事件の被告が保釈を認められる割合(保釈率)は全国で上昇している。背景には、長期の身体拘束で自白を迫る「人質司法」への批判の高まりがあるとされる。その一方で、保釈された被告が別の犯罪に手を染めるリスクもある。 保釈は、起訴後に拘置所や留置場に勾留されている被告を釈放する手続き。裁判所は逃亡や証拠隠滅の可能性を考慮し、可否を判断する。重大犯罪や住居不明の場合は認められない。 司法統計年報のデータを分析すると、2023年の全国の保釈率は31・3%で、08年の14・4%から倍増した。専門家の間では、否認や黙秘を続ける被告の長期勾留に厳しい目が向けられている点が影響しているとみる向きがある。京都地裁の保釈率は40%で、トップの宮崎地裁の43・8%に次いで2番目に高い。大津地裁は36・6%で9番目。 保釈中に事件を起こし起訴される被告も増加傾向にある。犯罪白書によると、03年の61人から23年は2・4倍の145人に増えた。起訴の罪種別では窃盗罪が64人と最多で、捜査関係者は「市民が別の事件で被害に遭うリスクもある」と打ち明ける。 保釈後は逃亡の恐れもある。保釈中だった日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡などを受けて、23年に刑事訴訟法が改正され、公判期日への不出頭や指定住居を離れた場合の刑事罰が新設された。 もっとも、逮捕、勾留といった身体拘束は必要最小限であるのが原則だ。立命館大の渕野貴生教授(刑事訴訟法)は「保釈中に別の犯罪をしたり、逃亡したりする人が出るリスクをゼロにすることはできない」とし、「人権を守る制度として保釈がある以上、保釈中の犯行を問題視するより、犯罪を繰り返す人への理解やケアに社会が目を向けるべきだ」と指摘する。

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