警察官などをかたって電話をかけ、相手に事件の当事者と信じ込ませてカネを送金させる「特殊詐欺」が、福井県内でも急増しています。県警は、過去最悪のペースに迫る勢いだと危機感を強め、県民に実態や手口を公表し警戒を呼び掛けています。 県警によりますと、県内では2025年1月から3月末までに特殊詐欺事件が17件発生し、2024年の同時期の約3倍、被害額は約1.5倍の7300万円余りに上っています。 2025年の特徴は、詐欺の容疑者が警察官や検察官を名乗って電話をかけ、電話の相手に「事件の当事者になった」と信じ込ませて金を送金させる手口です。 その際に、警察署の電話番号を表示したり、犯人がビデオ通話に警察官の制服姿で登場したり、中には偽の逮捕状を送るケースもあり、手口が巧妙化しています。 県内で2025年に被害が確認された17件のうち、年齢別では80代の41%が最も高くなっていますが、20代~50代も29%を占め2024年より10ポイント増えていて、幅広い世代に被害が及んでいることが分かります。 固定電話だけでなく携帯電話やSNSを使った手口も増加していることが、若い世代の被害増加の一つの要因とも考えられています。 福井県警・生活安全企画課の真杉順子警視は「番号だけで安易に本物の警察官と信用しないで欲しい。警察や検事を名乗る者が『あなたが捜査対象者になっている』と言うことは絶対にない。特定のお金を振り込めと要求することもないので、こうしたキーワードが出たら詐欺を疑って欲しい。少しでも不審に思ったらすぐに電話を切って最寄りの警察署の方に相談して」と注意を呼び掛けています。 特殊詐欺の被害は若年層でも増加していることがポイントで、「特殊詐欺の被害者はお年寄り」というイメージは過去のものになり始めています。 実際に起きた特殊詐欺の手口では、3月7日頃、福井市の70代男性に大阪府警本部の電話番号が表示された電話があり「あなたに逮捕状が出ている。お金を調べる必要がある」などと言われ、約700万円をだまし取られる被害にあいました。番号は実際に大阪府警と同一で、警察はどういうシステムで表示させたのか捜査しています。 次に、県内の40代女性のケースでは、国際電話番号で警察官をかたる男から電話があり「資金洗浄事件の捜査の中であなた名義のキャッシュカードが出てきた」と言われました。翌日、再び男からの電話でLINEアカウントに登録させられ、ビデオ通話で制服姿の偽警察官が偽の警察手帳を見せ、さらに逮捕状の画像も送ってきたといいます。「容疑をはらすためには紙幣番号を照合する必要がある」と言われ、女性は100万円を指定する口座へ振り込んでしまいました。逮捕状を見せられただけでなく、住所や氏名など個人情報を握られていると相手を警察官だと信じてしまうということです。 県警本部によると▼警察が電話やSNSで「あなたが捜査対象だ」と伝えたり逮捕状の画像を送ることは絶対にない▼警察が金の振込を依頼することはないとしていて、対策としては、警察官を名乗った人物から電話があっても落ち着いて電話を切って最寄りの警察に必ず相談してほしいとしています。 また、防犯情報を配信している県警のアプリ「ふくいポリス」をダウンロードしたり、固定電話がある人は国際電話の無料の休止サービスに申し込むという方法もあるということです。