夫の逮捕(刑事裁判は係争中)、離婚、そして“ひとりで生きる”という選択──。国際政治学者・作家の三浦瑠麗さんの生活はこの数年で一変した。6年ぶりのエッセー『ひとりになること』(KADOKAWA)では、そんな新生活での「気づき」をつづっている。三浦さんが、いま感じている「自由」を語ってくれた。(取材・文=平辻哲也) 2023年4月、20年近く連れ添ってきた事業家の夫が逮捕され、家宅捜索されるという事件が大きく報じられた。三浦さんにとっても激震ではあった。 「もちろんショックはありました。でも、私にとって人生で最もつらい出来事だったかというと、そうではありません」 三浦さんは自伝的エッセー『孤独の意味も、女であることの味わいも』(新潮社)では、中3の時の集団による性暴力被害、長女の死産も明かしている。 「(夫の逮捕は)、私に関係ないことだとは思いませんが、裁判というのはある意味で制度の中の問題であり、彼自身の課題です。私はただ、その結果がどうなるのかを見守る立場に過ぎませんでした。今も争っている段階なので、私が何かいうことは不適切でしょう。事件直後よりも、むしろ仕事に対するモチベーションを保てなくなった時期のほうが、私にとっては精神的にきつかったですね」 夫が逮捕・勾留され、いわば、結果的に別居を強いられたことは、夫との関係や距離を見つめ直す時間にもなった。 「彼のことを理解していたつもりが、実際には知らないことがたくさんあったのです。それに気づいたとき、自分自身を知り直す必要があると感じたんです。彼を知るということは、同時に自分を知ることでもあった。怠っていた努力を、ようやく始めたような感覚でした」 そんな日々の中で、家族や人間関係に対する見方も大きく変えていく。 「家族と過ごす時間の大切さに改めて気づきました。若い頃は『親元から離れたい』と思っていたのに、今はホームパーティーを開いたり、家族と交流することが穏やかでかけがえのない時間だと思えるようになったんです」 同じように、友人関係への視野も変わった。 「若いときは、恋愛とか趣味とか、軽やかな話題が中心。でも子育てをしていると、どうしてもその話しかできなくなる。正直、他人の子どもの話なんて、あまり関心が持てない時もありますよね(笑)。そんなことも、子どもが少し手を離れた今になって、ようやく気づけた気がします。それで、いろんな人の人生も想像できるようになりました」