高橋洋一氏 日産の巨額赤字を分析 中国で苦戦、改善の道険しく ホンダ、三菱自動車との統合話出てくる 北國新聞単独連載・政治経済ホントのところ

日産自動車は13日、2025年3月期の連結決算を発表し、純損益は6708億円の赤字(前期は4266億円の黒字)に転落した。販売不振に加え、リストラ費用の計上が響いた。今後は世界の車両生産工場を27年度までに七つ減らし、国内外で2万人の人員を削減するなど大規模な合理化を進め、業績立て直しを急ぐ。日産はどうなるのか。 まず、2000年以降の日産の株価の推移を見てみよう。08年9月のリーマン・ショック以降、他の株価と同様に300円を割り込む場面もあったが、すぐに反発した。 18年11月に元会長のゴーン氏が金融商品取引法違反の容疑で逮捕されると、株価は千円台から急落し、その上、20年初めのコロナ禍でさらに下げが加速し、300円台の中頃まで低迷した。 その後、持ち直して500〜600円台で推移したが、じりじりと経営不振で株価は下がり、300円台の中頃になった。24年末にホンダとの経営統合が話題になると、500円台を回復し、25年2月にそれが破談になると400円台前半で推移し、ここにきて300円すれすれまで低下している。 今回のリストラ策で株価は350円程度まで回復したが、理論株価は400円程度なので、上昇の余地は少ない。株価へのインパクトから見る限り、ホンダとの経営統合のプラス効果には遠く及ばない。 ホンダとの経営統合は、ホンダが日産を完全子会社化する案を提示し、これに日産が反発したためである。企業の競争社会では業績の劣るものが優れたものにのみ込まれるのは当たり前であるが、その当たり前を日産経営陣は拒んだ。 ホンダとの経営統合が破談になったので、今後の日産は自力回復と市場にのみ込まれて経営破綻という2択しかない。社債などの債務不履行時のリスクを取引する「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場」では、日産は日本でトップクラスに高く、つまり最も倒産確率が高い企業になっている。 いずれにしても日産の業績不振は、ほとんどの日系自動車メーカーが苦戦している中国での苦戦だ。今のような人民元安では、いくら技術で頑張っても無理だと筆者は思っている。 この点が劇的に改善されれば話は別だが、改善されないと、日産とホンダに三菱自動車を加えたEV(電気自動車)分野の連携はあるので、今後ホンダや三菱自動車を加えた統合の話も出てくるだろう。 (たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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