日常生活に支障をきたしても賭け事をやめられないギャンブル依存症。仕事や家庭を失い、借金を重ね、時には犯罪にまで手を染めるケースもある。依存症の実態と、そこから抜け出そうとする人々の姿を追った。 5月17日、大分市で開催されたギャンブル依存症問題啓発セミナー。講演では冒頭、東京在住の男性・原さん(30)はこう切り出した。 ■「ギャンブルに狂い、ギャンブルに脳みそを支配されていた」 原さんは大学生時代にギャンブルを始め、社会人になって知ったオンラインカジノにのめり込む。借金は消費者金融から500万円、両親から1100万円にまで膨れ上がった。 原さん: 「コロナ禍になり、なんとなく人生が物足りないなと思ったときに偶然YouTubeのおすすめ欄に出てきたオンラインカジノの動画を見ました。それがきっかけでオンラインカジノを始めました」 「あっという間にのめり込んでしまい、借金をするのが当たり前になりました。数枚あるクレジットカードを限度額まで全部使い切って、2か月後には消費者金融に申し込むようになって、さらにその2か月後はついに闇金に申し込みました」 ギャンブルに支配された日々。常に『どうやってお金を作るか』という思考でいっぱいだった。給料日に振り込まれた30万円弱の現金は、闇金への返済100万円を作るため、オンラインカジノにつぎ込んだ。2回程度の成功体験を引きずり、同じ過ちを繰り返し続ける。 そして原さんは、ついに犯罪に手を染めるまで追い詰められた。 原さん: 「ある日、闇金に3万円を返さないといけない状況があり、どうしても手元に準備できず、万引きをしようと決意しました。人の物を盗むことが、自分の人生を救う手段と思ってしまうくらい追い詰められていたし、正常な判断ができない状態に陥っていました」 ■千円札を握りしめた子ども時代の写真 ギャンブル依存症は本人だけでなく、家族も深く傷つける。息子のギャンブル依存症と10年以上向き合ってきた母親の佐藤さん(大分県在住)は、会場で1枚の写真を紹介した。