死刑執行も遺族「何も変わらない」SNS悪用相次ぐ事件 若者の「SOS」早くすくえ

《本当につらい方の力になりたい》―。神奈川県座間市の9人殺害事件で、強盗強制性交殺人などの罪で27日、死刑が執行された白石隆浩死刑囚(34)はツイッター(現X)にこうした投稿を繰り返し、自殺願望を持つ人などを誘い出しては犯行に及んでいた。10~20代の男女9人が犠牲となった事件は、悩みを抱える若者らのケアや交流サイト(SNS)上の犯罪対策といった課題を浮き彫りにしたが、SNSを介した同種の事件は近年も相次いでいる。 「刑が執行されても、何も変わらない」。事件で犠牲になった福島市の高校3年の女子生徒=当時(17)=の父親(70)は27日、産経新聞の取材に重い口を開いた。 女子生徒が亡くなったという知らせを聞いて以来、事件について「『意識しない』というのを意識してきた」。だが幼少期の写真を収めたアルバムや使っていた食器など自宅には思い出が詰まっていて、頭から離れることはなかった。8年近くがたった今も「毎日考える」といい、その日常に「変化はないだろう」と語った。 女子生徒の携帯電話の位置情報は、白石死刑囚のアパート近くで途絶えていたとされる。SNSを通じて白石死刑囚と接点を持ち、アパートを訪れて命を奪われた。 SNSを悪用し、悩みを抱えている若者に近づき、犯行に及ぶケースはその後も後を絶たない。 福島県警などは今年、SNSで知り合った10~20代の男女の自殺を手伝ったなどとして福島市の男を摘発した。男は「死にたい」などと投稿した若者らに「一緒に自殺しよう」といったメッセージを送って接触し、練炭を使った自殺に誘ったとみられている。 さいたま市のマンションでは今月、自殺をほのめかして所在不明となっていた女性の遺体が見つかり、殺人容疑で住人の男が逮捕された。女性とSNSで知り合ったという男は「合意の上で殺した。小さい頃から殺人願望のようなものを抱いていた」などと語り、女性の居場所が特定されないよう、スマートフォンのSIMカードを抜くよう指示。「住み込みのバイトに行く」といった置き手紙を家族宛てに書かせていたとされる。 座間の事件で亡くなった女子生徒の父親は、こうした犯罪が「なくなってほしい」と願う一方で、同種の事件が相次ぐ現状に「止めようがないのではないか」と力なく語った。

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