親族14人のマイナンバーを不正に集めたとして、埼玉県警生活経済課は10日、同県所沢市の職員、田中海斗容疑者(31)=東京都八王子市=をマイナンバー法違反(職権乱用収集)の疑いで逮捕した。県警と市によると、集めたマイナンバーを使って親族を勝手に自分と妻の扶養に入れて税の控除などを受け、215万円余りを不正に得ていたとみられる。職権乱用収集による立件は全国で初めて。 埼玉県所沢市の小野塚勝俊市長は10日に記者会見し、「市民の信頼を損なう行為で申し訳ない」と謝罪した。問題の発覚後、マイナンバーのシステムには複数人でアクセスするなどの再発防止策を導入したという。 市によると、逮捕された田中海斗容疑者は不正に収集したマイナンバーを悪用して「親族を扶養していた」と申告。過去12年分の本人と妻の市民税と県民税について、控除や還付を受けていた。 市に払う保育料も3年にわたって軽減され、不正に得た金額は計215万8000円に上るという。6月までに全額が返納された。 2024年9月、市に内部からの公益通報があって発覚。市が調査を進め、マイナンバー法違反容疑で県警に告発した。 マイナンバー制度に詳しい武蔵大の庄司昌彦教授(情報社会学)は「この制度は個人情報が厳格に管理されているという信頼で成り立っている。その信頼を裏切る重大な問題だ」と指摘。「業務の効率化などが重視されがちだが、市民の立場に立って制度を運用すべきだ」として、「ナンバーが閲覧・利用されたら、どの部署が何の目的で利用したか本人に通知されるシステムを作るのも一案ではないか」と訴えた。【高木昭午、小林多美子】