習近平とプーチンの「同床異夢」が明らかに…10カ国に増えたBRICS首脳会議で露呈した"中ロのすれ違い"

■中ロ首脳が欠席した2025年のBRICS首脳会議 7月6日から7日までの2日間、ブラジル南東部の大都市リオデジャネイロで、第17回BRICS首脳会議が開催された。10カ国体制になって初めて開催された今回の首脳会議だったが、中ロ首脳が欠席したこともあって、盛り上がりを欠く中で終幕した。また毎回の首脳会議がそうであるように、今回もさしたる成果は特になかったようだ。 前回の第16回の首脳会議はロシアのカザンで行われたため、ウラジーミル・プーチン大統領が前面に出てきたが、今回のBRICS首脳会議は、ホスト国ブラジルのルラ・ダ・シルバ大統領と、インドのナレンドラ・モディ首相が主導権をとるかたちで進められた。両首脳はトランプ関税を批判しつつも、米国を過度に刺激しないように努めた。 一方、BRICSの拡大を主導したプーチン大統領は出席を取り止め、腹心のセルゲイ・ラブロフ外相を派遣し、自身はリモート出席にとどめた。ウクライナ侵攻に関して国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領の逮捕状を出していることがその理由である。とはいえ、より重要なことは、中国の習近平国家主席の欠席をどう解釈するかにある。 習主席が出席を見送った理由は定かではなく、健康不安説など、様々な憶測が飛び交っている。代わりに李強国務院総理(首相)が出席したわけだが、習主席がBRICSというプラットフォームをもう重視していないという見方も成立するし、習主席が出席すればトランプ政権を刺激するため、やむを得ず参加を見送ったという見方もできる。 習主席がBRICSを重視しなくなっているのは確かだろう。ロシアの強い意向を受け、中国も賛成するかたちでBRICSは拡大したが、加盟国が増えるほど、原加盟国の位置づけは揺らぐという矛盾がある。それにBRICSでは、中国と緊張関係にあるインドの発言力も大きい。BRICSにかかわらず、二国間外交を重ねた方が中国にとって合理的選択だ。 ■BRICSペイやデジタル人民元に関わる誤解 ところで、BRICS間で貿易決済を行うための共通通貨(あるいは決済網)として、BRICSペイと呼ばれる仕組みが提唱されて久しい。しかし、今回の首脳会議でもさしたる言及はなかったようだ。その実、BRIC各国にとって、BRICSペイを使う理由はあまりない。各国とも最大の貿易主体は中国なので、人民元で決済をすればいいだけだからだ。

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