北京で11月29日、ある「スパイ事件」の判決が下され、世界の言論界の注目を集めた。一般論として、このようなケースの処理を誤ると、国際世論の批判や外交問題を引き起こす可能性がある。しかし、一方で、この件は日中関係が現在微妙な状態にあり、何らかの変化が生じる可能性があることも示している。 経緯を見てみよう。中国の有名な政府系メディア「光明日報」(主に文化人や知識人を読者としている)論説部副部長であった董郁玉氏(62歳)が2022年2月、ある日本の外交官と昼食を共にしていたところ、突然警察に連行され、拘束・尋問された。 董氏の家族はこのことを公にはせず、起訴を免れるよう手を尽くした。これは中国における常套手段である。しかし、2023年3月、彼は裁判所で審理されることになり、7月から北京の拘置所で拘留された。その後、2024年11月29日に「スパイ罪」で有罪となり懲役7年の判決を受けた。家族は「極めて不公平」と感じ、この結果は「中国の司法制度の瓦解を世界に宣言した」ものだと考えた。 董郁玉は世界の文化コミュニティーでよく知られており、人気も高い。彼は、2010 年と 2014 年に日本の慶応義塾大学と北海道大学でそれぞれ客員研究員として滞在している。そのため、この事件をきっかけに700人以上の学者、ジャーナリスト、NGO関係者が彼の釈放を求めるオンライン署名に賛同している。このケースは今後も尾を引く可能性もあり、日中両国政府は慎重に対処しているところだ。