大阪地検特捜部が手がけた事件の取り調べで「検察なめんな」などと発言し、特別公務員暴行陵虐罪に問われた検事の田渕大輔被告(54)=現東京高検=の公判が10日午後1時半、大阪地裁で始まる。直接的な暴行はなく、暴言のみが同罪に問われるのは異例だ。 田渕被告は、裁判所による「付審判決定」の手続きで刑事裁判にかけられた。この手続きで、現職の検事が被告となるのは初めて。 付審判決定によると、田渕被告は2019年12月8~9日、不動産会社「プレサンスコーポレーション(当時)」が絡んだ業務上横領事件で、容疑者の取り調べ中、長時間にわたり一方的に「検察なめんなよ」などと叱責(しっせき)・罵倒したとされる。関係者によると、田渕被告は無罪を主張する方針だという。 田渕被告の取り調べを受けたのは、特捜部に逮捕されたプレサンス社の部長だった男性だ。 「ちょっと今勘違いしていました……」 自身の供述の矛盾点を問い詰められた男性がそう釈明した瞬間、取り調べ検事だった田渕被告が机を思い切り「バン!」とたたいた。 「ふざけんじゃねえよ! いい加減なこと言っちゃだめだろう!」 黙る男性に田渕被告はたたみかけた。「検察なめんなよ! 命懸けてるんだよ、俺たちは」 特捜部は、横領事件にプレサンス社の社長だった山岸忍さん(63)が関与しているとの疑いを持ち、部下にあたるこの男性に、山岸さんの関与について問いただしていた。 男性は当初、山岸さんの関与を否定したが、この取り調べの後に山岸さんの関与を認める供述をした。 その供述を重要な証拠として、特捜部は山岸さんを逮捕・起訴した。しかし山岸さんの裁判で、大阪地裁はこの供述の信用性を否定。山岸さんに無罪を言い渡した。 山岸さんは田渕被告を特別公務員暴行陵虐の疑いで告発したものの、地検が不起訴としたため、大阪地裁に刑事裁判を開くよう求める「付審判請求」を申し立てた。地裁は退けたが、大阪高裁は24年8月、田渕被告の刑事裁判を開くことを決めた。 この公判では、地裁が指名した「指定弁護士」が検察官役を務める。 検察官の取り調べをめぐっては近年、不適切だと指摘されるケースが相次いでいる。先月には、東京地検特捜部が手がけた詐欺事件の取り調べで、容疑者に「黙秘を人のせいにするな!」などと怒鳴った検事が、田渕被告に続いて刑事裁判にかけられることが決まった。 指定弁護士は田渕被告の公判で、不適切な取り調べを繰り返す検察庁の体質にも踏み込んで主張する考えだという。(遠藤美波)