「大イスラエル」の夢、目前に アメリカとの謀略が導く◇東海大学客員教授・アラビア語同時通訳者 新谷恵司

イスラエルからイランの首都テヘランや、中部の核施設までは約1500~2000キロあり、イスラエル空軍の主力戦闘機F35戦闘機では航続距離が足りない。それが、戦闘機による核施設攻撃が何年も前から繰り返しうわさされつつも実行されない理由の一つで、2026年に予定される最新鋭空中給油機の納品まで攻撃はないかもしれない-などと筆者は勝手に考えていた。 しかし報道によれば、25年6月13日の攻撃に参加したF35戦闘機はドロップタンク(使用後落下させる増設燃料タンク)を取り付けることで、空中給油や他国(米軍基地)での着陸給油なしに長距離攻撃を実行できたとのことだ。そう明かした「匿名の米当局者」によれば、アメリカが協力したこの改造のおかげでF35戦闘機はステルス性能を維持しつつ、航続距離を延長できたという。 攻撃が開始された日、アメリカのルビオ国務長官は開口一番、「米軍の不関与」を強調した。匿名を条件に「改造」情報を暴露した米当局者もまた、攻撃はイスラエルの単独作戦であって、米軍の空中給油機や基地は使用されなかった点を印象付けたかったのではないか。しかし、イスラエルの作戦遂行を可能にしているのはアメリカであり、間接的であっても深く関与していることを暴く皮肉な結果となった。

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