預金残高わずか6円、「21世紀に飢え死にするなんて…」 下町のたばこ店に強盗に入った73歳の職人が生活保護を拒んだ理由とは

「21世紀に飢え死にするのかと思ったら、なんだかみっともないなって」。大事な切手コレクションも、母の形見の宝石も、金に換えるため手放した。骨張った体を丸め、小さな声で動機を話す男の預金通帳に刻まれた残高はわずか6円だった。 2023年、東京・江戸川区のたばこ店に刃物を持って押し入り現金5万円を奪った強盗致傷事件の公判。「空腹で頭が真っ白だった」。法廷では、建設現場の職人として下町で静かに生きてきた73歳の被告の男が、困窮を極めて犯罪に走るまでのいきさつが明かされた。(共同通信=助川尭史) ▽高校中退、勤務先は倒産…。70歳を過ぎ無一文に 1952年、8人きょうだいの7番目として生まれた。家はとにかく貧乏だった。きょうだいで唯一高校に通うことができたが授業料が払えず1年で退学。就職した会社は倒産。結婚もしたが妻の浮気が原因で離婚した。それでも工場や建設現場での勤務を転々としながら資格を何個も取得し、JR新小岩駅から徒歩30分、築60年以上のアパートの一室でほそぼそと暮らしてきた。

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