今年1月に亡くなった竹内英明元兵庫県議に対する名誉毀損容疑で逮捕されたNHKから国民を守る党の党首・立花孝志容疑者(58)について、弁護人である石丸幸人弁護士が14日、自身のYouTubeチャンネルで「自白ということで今後、手続きが進んでいく」などと述べた。犯罪の成立を争うと見られていた立花容疑者側の方針転換に驚きの声が上がる中、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「混乱の始まりかもしれない」との危惧を口にした。 ◇ ◇ ◇ それは衝撃の宣言だった。 「本日ですね。本人とも話して、真実相当性は争わないという弁護方針を取ることに決定いたしました。法律的に言うと否認ではなくて、自白ということで今後、手続きが進んでいくということになります」 立花容疑者を弁護する石丸弁護士がYouTubeで、新たな弁護方針についてこう明かしたのだ。それは立花容疑者が突然罪を認めるという「大転換」だった。 当初、立花容疑者は「きちんとした情報源からの情報を信用して発信した」といういわゆる「真実相当性」を主張して無罪を訴える意向と報じられていた。同容疑者については、2023年3月に威力業務妨害、脅迫などの罪で、懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決が確定している。この状況下、今回の事件で起訴され、前事件の執行猶予期間が終わる27年3月までに拘禁刑以上の実刑が確定すると、今回事件の刑に加え、前事件の懲役2年6月も復活することになる。それを避けるためにも立花容疑者は今回の事件を争い、裁判を引き延ばすのではないかという観測もあった。 しかし、犯行を「自白」するとなると話が違ってくる。自白事件の審理は1回で終わることが多く、一審判決後に控訴、上告をしても数か月あれば終結する可能性が高い。裁判を前刑の執行猶予が切れる27年3月まで長引かせることは困難だ。 では「自白」して反省をアピールすれば、立花容疑者は刑務所での「実刑」を回避できるのか。立花容疑者が前刑の執行猶予を取り消されないためには、まずは今回の事件を「罰金刑にしてもらう」または「拘禁刑の場合でも、今回も再び執行猶予を付けてもらう」ことに成功する必要がある。 しかし、その可能性は「厳しい」と思う。まず、罰金刑となるのは、原則として検察側が事件を正式裁判ではなく「略式起訴」という簡易な手続きで処理したり、裁判であえて罰金刑を求刑した場合だ。だが、これだけ注目を集める重大事件を検察側が罰金で済ませようと考えることはないだろうし、そうした判断をしたら社会的批判も大きいだろう。 また、裁判所が立花容疑者に再び執行猶予をつける可能性も「厳しい」。24年(令和6年)の検察統計によれば、執行猶予期間中に行われた犯罪に再び執行猶予がつけられた数は1年で122件。執行猶予が取り消された件数に比べ約4%に過ぎず、その内訳も半数以上が万引きなどの窃盗事件だった。これに対して、立花容疑者の逮捕容疑は警察の捜査について虚偽を発信し、被害者の命が失われた深刻な事案。しかも、竹内元県議が亡くなった際、立花容疑者はYouTubeでこう語っていた。 「亡くなられていますけども、竹内県議に対して何か申し訳ないなとかっていう感情は、正直ないです」 この立花容疑者が逮捕後に態度を一変させたとして、裁判所はこれを本心からの反省と認定して再び執行猶予をつけるか。今年6月の刑法改正で「再度の執行猶予」の条件が多少緩和されたが、それでもハードルは高いだろう。さらに、実現したら立花容疑者に有利な事情になるはずだった被害者側との示談も、竹内元県議の遺族が申し入れを即座に拒絶している。 こう考えると、立花容疑者が「自白」の上で起訴された場合には、刑務所行きを回避する道は「八方塞がり」にも思える。現に過去の裁判例では、執行猶予期間中の名誉毀損事件について厳しい実刑判決が出されている。