大津市の保護司殺害事件の悲劇を繰り返さず、持続可能な制度にするには社会の変化に合った改革が必要だ。 保護司制度の在り方を議論してきた法務省の有識者検討会が、法相への最終報告書をまとめた。早ければ、来年の通常国会に保護司法改正案を提出するという。 1950年施行以来、初めての制度見直しになる。 保護司は、罪を犯した人が立ち直り、地域社会で生きていくための「伴走者」である。 報告書は深刻化する担い手不足の解消を目指し、公募制の試行、原則66歳以下とする新任の年齢制限撤廃、現在2年とする任期の拡大を提言した。 今年5月に保護司が大津市の自宅で殺され、担当していた保護観察中の男が逮捕された事件を受け、安全対策の強化も盛り込んだ。 事件前の調査でも、4人に1人が自宅での面接に不安を感じていると答えた。このため、保護観察対象者との面会時、自宅以外の場所の充実や複数人での対応、法務省職員である観察官の同席を提示した。 一方で、対象者一人一人、犯した事件も背景も異なり、打ち解けた雰囲気の自宅だから話を聞けるという声もある。臨機応変に対応できる体制の拡充が欠かせない。 最大の課題は、人材の確保だ。高齢化と担い手不足に歯止めがかからない。法務省によると、全国の保護司数は2024年1月時点で、4万6千人余りで法定数に約6500人も足りない。平均年齢は65歳を超える。 保護司は実費以外無報酬の民間ボランティアのため、報酬の導入も検討されたが、「自発的な善意を象徴するものでなじまない」として見送られた。利他の精神を重んじたとのことだが、より幅広い人材を発掘するには壁になる。 社会貢献への意識の高い人は多い。現役世代が活動しやすい環境整備に向け、特別休暇を設けるなど自治体や企業内の制度づくりを促せないか。東京では活動場所を提供したり、職員が保護司になることを制度化したりする区もある。 明治時代の篤志家を起源にする日本独自の制度も、少子高齢化で社会が大きく変わる中、やりがいや善意だけでは限界も近い。 保護司の使命を「地域社会の浄化をはかる」とする法の文言は古い時代感覚を象徴しよう。報告書では5年ごとの制度の検討も明記されており、現場の実情に即した不断の見直しを求めたい。