日本で大きな社会問題となっている「闇バイト」。しかし、日本で起きていることは、もちろん世界でも起きている! アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカでの「闇バイト」について取材したところ、その壮絶な実態が明らかに……! * * * ■宣伝目的で名所に落書き! 昨年12月、いわゆる「闇バイト」の実行役として来日した台湾籍の男ら2人が詐欺未遂容疑で逮捕された。 彼らはフェイスブックで、「外国で手早くお金が稼げる」と勧誘されて来日。何者かの指示により、都内在住の70代男性と60代女性に「あなたの携帯電話が詐欺に使われ逮捕状が出ており、国税局に金塊を渡せば疑いが晴れる」などと嘘の電話をかけて財産をだまし取ろうとした事件に加担したという(その後別の詐欺事件で再逮捕)。 このように今や日本の「闇バイト」の勧誘は海を越えている。ただ、甘い言葉に乗せられ、不法な行為に手を染める……というタイプの犯罪は、日本だけで急増しているわけではない。お隣の韓国でも若者への犯罪行為の勧誘は大きな社会問題となっている。 「こちらでは『不法アルバイト』と呼ばれていますが、その内容の多くは振り込め詐欺です。2022年には振り込め詐欺事件の容疑者として20代以下だけで9149人も検挙されたことから、韓国の警察庁が世間に注意喚起する事態となっています」 そう語るのは、朝鮮半島地域研究を専門とするジャーナリストの吉崎エイジーニョ氏。韓国の「不法アルバイト」には、日本の「闇バイト」との共通点が多いと話す。 「ネットで『高額アルバイト』をうたった求人広告をクリックすると、『節税』を名目に『資金移動の手伝い』や『現金運搬の手伝い』といった仕事を紹介されます。 しかし、実際の内容は犯罪行為の手伝いであり、振り込め詐欺の受け子(現金回収役)であることがほとんど。主に若者がリクルートされる点も似ており、日本の『闇バイト』と関連づけて報じられる事件まで発生しています」 それは2023年12月にソウル市内で起こった。 「景福宮という朝鮮王朝時代に建築された王宮の外壁に、『映画無料』という文字と違法動画共有サイトのURLがスプレーで落書きされているのが発見されました。 実行犯として逮捕されたのは10代の男女で、この違法サイトの運営者を名乗る人物から『景福宮などの名所に宣伝を書けば300万ウォン(約34万円)を払うと言われた』と供述しました」 後に指示役の違法サイト運営者も逮捕されたが、実行役の男女が受け取ったのは結局、先払い分の10万ウォン(約1万1000円)に過ぎず、高額報酬に釣られた若者が使い捨てにされる様も韓国社会に衝撃を与えた。 「同時期に日本で『闇バイト』が問題になっていたこともあり、『このままでは日本のように凶悪な犯罪が起きるかもしれない』『社会全体で若者の問題を考えていくきっかけにすべきだ』といった報じられ方をしていました。 これ以降、『ナムウィキ』という韓国のネット百科事典にも『闇バイト』という言葉が登録されています。まだ日本のような強盗事件などは起こっていませんが、もし凶悪犯罪が増えれば、韓国でも『闇バイト』という言葉が一般化する可能性はあるでしょう」