詐欺かも? でも裁判所からの手紙はよく見ましょう【「表と裏」の法律知識】

【「表と裏」の法律知識】#253 今月2日、警視庁は裁判に出廷しなかったとして刑事訴訟法違反(公判期日への不出頭)容疑で元社長を逮捕しました。この元社長は、カードゲーム企画販売会社の口座から約1億8000万円が不正に引き出された事件で、会社法違反(特別背任)容疑で逮捕・起訴されて保釈中でした。逃走先の宮崎市内で発見されたそうです。 不出頭罪は、日産自動車の元会長の逃亡をきっかけに、昨年11月施行の改正刑訴法で新設されました。同罪を適用して摘発した事例は全国でも異例だそうです。 不出頭罪は、刑事事件で保釈中などの者が裁判所の呼び出しに応じず、裁判に行かなかったときに問われる罪です。罰則としては、2年以下の拘禁刑が科されるとされています。それだけでなく進行中の刑事事件の罪についても、より重い刑事罰を負うことになることが多いかと思います。 不出頭罪は、刑事事件の被告人にのみ適用されるものですが、民事裁判においても、裁判への不出頭は大変な不利益があります。 例えば、民事裁判を起こされ、被告として裁判所から通知が来た際に、その通知を無視し、その裁判に出席しなかった場合、裁判所はそのまま審理を進め、欠席判決を下すことがあります。この場合、実際のところ事実がどうであったかに関係なく、訴えた側の主張通りに請求が認められてしまうことがあります。 事件の当事者でなくとも、証人として呼び出されているにもかかわらず、これを無視していると、裁判所は、その証人に対して、罰金や過料を科したり、「勾引」といって強制的に連行する手続きをとることができます。証人への罰金や過料、勾引は、実際には、めったにされることはありませんが、欠席判決については、民事裁判ではよく見かける光景です。 このように、裁判所からの呼び出しを無視すると、刑事事件・民事事件を問わず、さまざまな不利益を被る可能性があります。 裁判所を名乗った詐欺もあるため、警戒も必要ですが、裁判所から手紙が来た場合は、勝手に放置せず、きちんと中身を確認し、裁判所や弁護士に相談するようにしましょう。 (髙橋裕樹/弁護士)

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