「漫画家脅迫事件」の犯人が感動した刑事の言葉「君は地頭はいいのに…」

「自分はなんてダメな人間なんだ」と打ちひしがれ、自らを“肯定”できずにいる人も多い。インド仏教徒の小野龍光氏と精神科医の香山リカ氏は、自らの仕事を通して人々の“自己肯定感の低さ”に触れる機会が多いという。そんなふたりが、宗教と自己肯定感について語り合う。※本稿は、小野龍光、香山リカ『捨てる生き方』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。 ● 現代人の多くが抱えている 自己肯定感の低さへの悩み 香山 私は精神科医として、龍光さんは悩める方のお話を聞くという立場で、今までいろいろな方の悩みや苦しみに接してきたと思うんですが、具体的に、現代人につらさを感じさせている要因についてお話していきたいのですが、いかがでしょうか。 小野 はい、承知いたしました。去年から開設したインターネットの「龍光ポスト」というページには、本当にさまざまなご相談を頂戴します。それぞれ年齢も環境もまったく状況は違うんですけれども、自己肯定感のなさ、自信のなさというのが多くのご相談の根底に共通してあるように感じております。 香山 たしかに現代病のひとつとして、自己肯定感の低さはあると思いますね。私も、精神科医として、若い患者さんといろいろな話をするのですが、誰も私を救ってくれない、自分を変えたいけど変えてくれるような人とは出会えてないというように、「出会いがない」というのが自分の苦しみの原因なのだと考える人が、けっこういらっしゃるんですよね。 私も、そういう方に向かって、「出会いは自分から見つけるものですよ」といった、そういう通りのいい言葉はかけにくい。実際、だいたいその方たちは現実的な困難のなかにあるわけで、そこで「出会いを探せ」と言われてもすぐに動けないですよね。限られた環境ではチャンスもありません。同じような環境では会える人も限られています。そうするとどんどん閉じたほうに行ってしまう。 小野 それはとてもせつないですね。自分ができるのは、たまたま縁あって自分にご相談をいただいた方にメッセージをお戻しするくらいですが、そういう方には僕は、まず「大丈夫ですよ」と伝えさせていただいております。息をして電気もありメールを書けているだけでも、すばらしいことかもしれないじゃないですか、と。その言葉がどのように役に立つかはわかりませんが、ただ祈るような気持ちでいます。

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