「ルパン三世」はいったい、何歳なのだろう。私(記者)が小学生の頃、学校から帰った夕方、テレビアニメの再放送を熱心に見ていた覚えがある。1980~90年代。希代の大怪盗の孫は、それよりもはるかに前(再放送が新作として放送された頃)から、世界を股に掛けて暴れ回り、私たち見る側をとりこにしてきた。 令和の世の中、世代的には「四世」、いや「五世」が活躍しているのでは……と妄想したことがあるが、やはり私たちが見たいのは、細身で長いもみあげ、赤のスーツが似合う不死身の(設定上、年をとらない)男、「三世」なのである。 シリーズでは約30年ぶりという2Dアニメ作品「LUPIN THE ⅢRD 銭形と2人のルパン」がAmazon Prime Videoなどで配信中。現代風の洗練された絵柄で、ルパン三世が一層スタイリッシュに見える。 ◇開始から数分 爆弾が「ボン」……! 「銭形と2人のルパン」の舞台となる国は「ロビエト連邦」と「アルカ合衆国」。どうやら両国の間には、ひどく「冷たい」風が吹き、軍事的に一触即発の雰囲気らしい。 「ルパン三世」シリーズといえばおなじみ、銭形警部(声・山寺宏一)はロビエト連邦の空港に降り立つ。ロビーで、そばにいた小さい女の子がぬいぐるみを落とし、銭形は拾って渡してあげる。ほどなくして、何者かが仕掛けた爆弾が爆発する。銭形は一命を取り留めたが、残念ながら女の子は亡き者になったようだ。 開始数分で視聴者は驚く。「ボン」と口にして爆弾のスイッチを押したのは、ルパン三世。 ◇殺しはしないはずなのに ええっ、ルパン三世って盗みはしても、殺しはしないのがポリシーだったはずでは!? 銭形だけでなく、視聴者も驚く展開。タイトルに「2人のルパン」とあるが、彼の正体は……。 「本物」のルパン三世(栗田貫一)もあとから登場。彼もある目的で、ロビエトに乗り込んでいた。次元大介(大塚明夫)も同行し、峰不二子(沢城みゆき)は別の目的で、サーカス団の一員となって内部に潜入。ロビエトの最高指導者に近づき、貴重な宝石を受け取る。 ルパンは爆破テロ実行犯の容疑者でアルカ合衆国のスパイだと断定され、国家保安委員会に追跡される。さらに、ロビエトで新たな爆発が起こり……。ルパン、命の危機か? ◇列車での攻防戦 あの超絶スパイと一緒? さて、緊迫のストーリー展開ももちろんだが、見どころは他にもある。 「銭形と2人のルパン」の序盤を見ていて、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」を思い出した。折しもその続編「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」が公開中で、超人的スパイのイーサン・ハント(トム・クルーズ)が奮闘している最中だ。 ルパンたちが走行中の列車の外に飛び出て屋根に乗り、銭形はルパンや次元の身柄を押さえようと攻防を繰り広げる。 トンネルが近づくと全員が体を伏せて、明るくなったら再び立ち上がって……というシーンがあった。 「デッドレコニング」でもそんな場面が。映画の終盤、列車でのイーサンと宿敵の攻防戦が、ヤマ場の一つだった。きっと世界を救うためには、列車の上でもカーチェイスでも空中でも(「空中」は「ファイナル・レコニング」の見せ場だったが)、派手に戦わないといけない(?)のだ。 ◇ほんとは敏腕だったかも もう一つ。とにかく銭形警部が「かっこいい」。テレビアニメ版よりも推理力が鋭く、体の動きも軽快で、ハードボイルドな雰囲気がにじんでいる。 かつてのアニメの「銭形のとっつぁん」といえば、毎度ルパンの逮捕に失敗する、ちょっと情けない感じのキャラクターだったはずだ。ルパンと相対する好敵手は、互角の存在であったほうがぐっと迫力が増す、ということなのだろうか。 ここで考え直した。小学生の時に見てきた銭形警部は、本当に「ダメ男」だったのか。それは自分の思い違いで、実はもっと敏腕で、ルパンの存在が圧倒的だったから紙一重でかなわなかった……のかも。 昔の銭形はどうだったのだろうと気になったが、インターネット配信サービスを検索すると、例えば78年の「ルパン三世 ルパンVS複製人間」が視聴可能だ(Netflixで配信中)。最新作を見た後は、かつてのシリーズを見返す「復習」も、いいかもしれない。【屋代尚則】