豪華キャストに潤沢な制作費、そして惜しみなく使われる火薬――。1970年代から1980年代にかけて「刑事ドラマ」は黄金時代を迎え、民放各局は真っ向勝負を繰り広げた。『西部警察』(テレビ朝日系)など数々の作品で活躍した加納竜に、撮影秘話を聞いた(以下、本人談)。 ※ 『西部警察』の現場はめちゃくちゃ怖かったです。撮影用のセットに、ガソリンが入った袋の下に火薬が仕込まれていて、それがいくつも置いてあるんです。 「用意、スタート!」で外へ走り出た瞬間、背後でドカンといく。仕込んであった板が頭上に落ちてきて、痛いし熱い。体育館みたいなのを吹っ飛ばしたときは、さすがの渡哲也さんも「おい、早くしろ!」って叫んでいました(笑)。 僕は『西部警察』以前にも刑事ドラマの出演が多かったんです。いちばん最初は『華麗なる刑事』(フジテレビ・1977年)。草刈正雄さんと田中邦衛さんが主演で、とにかく草刈さんがカッコよかった。身長も高く、ギリシャ神話の彫刻みたいで、いつも見惚れていました。 次が『刑事犬カール』(TBS系・1977〜78年)。木之内みどりさんが高杉婦警を演じ、刑事犬カールとともに事件を解決していく。僕はその先輩刑事でした。 このドラマの主役はなんといってもカール。大きなパラソルで夏の日差しから守ってもらい、僕らがロケ弁を食べる横で5000円ぐらいの肉を食べていました。 犯人を追いかけるシーンで僕のお尻にガブッとくることも。ちゃんと犯人を噛んだときは「カール、今日は台本読んできたな」と褒めていました(笑)。 その次に出演したのが『鉄道公安官』(テレビ朝日系・1979〜80年)。東京駅を借りる撮影はとても大変でした。2カ月に1回ほどしか使えず、時間厳守でセリフを間違えれば、すぐに押してしまうんです。そんなときは、助監督に「朝まで(主演の)石立鉄男さんと飲んで、そのまま連れてきて」と頼まれたこともあります。 酒の匂いは映像には映らないし、4K、8Kの時代じゃないから目が充血していても大丈夫(笑)。役者が豪快に朝まで飲んでいた時代でした。 当時は「逮捕」こそが刑事ドラマの美学でした。鑑識役の俳優は、難しい台詞を覚えるのが大変だとよくこぼしていましたが、今は彼らが主役になる時代です。走って追いかけて捕まえるーーそんな昔の刑事ドラマとは、だいぶ様変わりしましたね。 それでも僕にはまだ、人を導いて歩ませてあげることはできると思っています。2018年からは大阪芸術大学短期大学部で、30人の学生に演技指導をしています。僕の信念は100回の稽古より一回の本番。同時に、繰り返し練習を重ね、辛抱強さも身につけてほしい。 教え子と共演するのが僕の夢だったんですが、卒業生が一人、縁あって僕の所属事務所に入ったんです。ひとつ夢が叶いました。 そして、10年ほど前から都内にあるミュージカル教室で、子供たちにも演技を教えています。子供たちの指導のほうが大学生より難しいですね。子育ては大変です。 僕は2015年に再婚し、6歳と9歳の子供がいます。ミュージカルの共演で知り合った妻は、32歳年下。よく “人は還暦で生まれ変わる” といいますよね。 前妻との子供の子育てはほとんどできなかったので、きっと “もう一度ちゃんとしろ” と言われてるんだなと思って、いまは必死に励んでいます。僕にとっての終活ですね。 ■かのうりゅう 『華麗なる刑事』(フジテレビ系)や『刑事犬カール』(TBS系)、『鉄道公安官』(テレビ朝日系)など、多数の刑事ドラマに出演。現在は大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科舞台芸術コースの教授 ■『西部警察』(テレビ朝日系)/1979〜1984年 石原裕次郎演じる大暮課長と渡哲也演じる大門部長刑事が率いる “大門軍団” の刑事たちが事件を解決していく。派手な銃撃戦やカーアクション、火薬を使った爆発シーンが大評判を呼ぶ。ロケ地を封鎖しての大規模撮影で、1980年代を代表するシリーズに