去年2月、両親を殺害した罪に問われた当時高校1年生だった少年の裁判で、横浜地裁は家庭裁判所に移送する決定をしました。少年が事件を起こした背景について、裁判所は両親からの虐待があったと判断しました。 裁判長 「両親による長年の不適切な養育がなければ、事件は起こらなかった」 少年が両親を殺害した事件で、裁判所はこう言い切りました。 去年2月、神奈川県相模原市のマンションで少年の父親(当時52)と母親(当時50)が遺体で見つかり、当時高校1年だった少年(当時15)が包丁などで両親を刺して殺害したとして、逮捕されました。 少年を知る人 「学校では結構ハキハキしたいいやつだったと聞いていた。すごいショック、小さいときから、赤ん坊のときから知ってるから。(母親は少年を)肌身離さず、すごくかわいがってたから。だから、なんであんなに愛されているのに」 なぜ両親を殺害したのか。少年が裁判で語ったのは、幼少期のころからの両親による“虐待”でした。 少年 「ものを使って殴られたり、水や酒をぶっかけられたり、日常的に『下僕』だとか『失敗作』だとか言われた」 両親による暴力や暴言は少年が小学1年生のころから始まり、ネグレクトもあったといいます。 少年 「両親は家事を全くしませんでした」 中学校に入学すると親からの暴力はおさまり、高校は県内の進学校に進みました。 そして、事件直前の去年2月、少年がコンビニエンスストアで万引きをしたことを知った父親から暴力を振るわれ、外出禁止を言い渡されたといいます。少年の心には… 少年 「底なしの恐怖感や束縛感がよみがえってきた」 少年は寝室で寝ていた父親の左目や首を包丁で刺して殺害。その後、帰宅した母親も殺害しました。 少年の置かれてきた状況に周囲は気付けなかったのでしょうか?小学校時代の同級生の親は… 少年の同級生の親 「小学生のころに何度か『お父さんに叩かれた』、『殴られた』まではいかないと思うんですが、叩かれたということは私の子どもを通して聞いていた。何があったのかということをもっと深く聞いて、それで防ぐことができる部分もあったのかなと」 少年は中学3年のころ、父親とのトラブルをきっかけに警察で話しを聞かれた際に「4、5年前に叩かれたことがある」と話し、警察が児童相談所に通報。児童相談所は半年間、見守りを行いましたが、「家族関係は良好になった」として対応を終了しました。 その後、児童相談所に連絡があったのは、事件発生の数日前。父親から「子どもとの向き合い方に悩んでいる」という相談でした。 その際の様子を児童相談所が今回、初めてカメラの前で語りました。両親抜きで少年とも面会すると… 相模原市児童相談所 藤田信子 参事兼課長 「高校生になって、ご自身も成長している中では『今は困っているようなことはない』と」 結果的に少年の異変を見つけ出せなかったことについては、苦しい思いを抱えています。 相模原市児童相談所 藤田信子 参事兼課長 「そこまでの覚悟をしているのであれば、遠慮なく、正直に話してほしかった」 専門家は「児童相談所を責めるだけでは、問題は解決しない」と指摘したうえで、それでも何らかのサインはあったかもしれないと話します。 山梨県立大学大学院人間福祉学研究科 西澤哲 特任教授 「少年が殺意を形成するまで、誰にも知られずにその状況が1個、熟成されていったとは考えにくい。彼はサインを発してるんだけど、周りが気づかなかった可能性はある」 検察側は10年以上15年以下を求刑していましたが、横浜地裁はきょう… 裁判長 「両親による長年の不適切な養育がなければ、事件は起こらなかった」 さらに、「責任は非常に重大であるものの、少年のみを責めることは相当ではない」などとして、家庭裁判所に移送する決定をしました。 最後に裁判長は、少年にこう語りかけました。 裁判長 「一生をかけて、ぜひ責任と向き合い続けて欲しい」